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心肺蘇生法 ワンポイント

循環器内科医師   杉浦広隆

  一見健康そうな人を突然襲う心臓突然死は、40-50代に多く、発症から1時間以内と短時間で死亡する恐ろしい病態です。心臓突然死の発生は年間約5万人といわれ(全死亡の20人に1人、上越市で換算すると年間80人の方が心臓突然死で亡くなります)、その原因で特に多いのが急性心筋梗塞による心室細動という不整脈です。
・・・・・7月の某日、父が部屋を出て廊下に行ったところ、ドーンと音がしました。あわてて駆けつけたところ、父は仰向けで倒れていました。「お父さん、大丈夫?」と呼びかけをして叩きますが、反応がありません。私は直ちに「119番通報をして!」と母にいいました1。次に父のおでこを抑えあご先を持ち上げ気道(空気の通り道)を確保しましたが、呼吸をしていません2。そこで、息を2回吹き込みました3。それでも体はぴくりとも動かず息をしてくれません4。私は心臓マッサージを始め、人工呼吸を行い5ながら、救急車が来るのを待ちました。救急隊が到着して機械が装着され、その後電気ショックが行われ、そのまま病院へ運ばれていきました・・・・・
これは、現在勧められる手順に基づいた、一般市民による心肺蘇生の一連の流れです。ワンポイントアドバイスを入れてみました。

  1. 心肺蘇生では「まず通報」です。その場に自分しかいない場合は、やむをえず「お父さんを置いたまま、まず電話に行く」です。これは、心室細動は出来るだけ早期に電気ショックが行われなければ回復しなくなるからです。
  2. 救助者は耳を患者の鼻と口に近づけ、呼気の有無を「聞いて」「感じて」、と同時に胸の動きを「見て」呼吸の有無を確認します。不十分ながら呼吸をしているケースでも、十分ではないと思ったら息の吹き込みをしましょう。
  3. おなか(胃)に空気が入らないように、ゆっくりと(2秒ぐらいかけて)吹き込むことがコツです。尚、救助者がマウストゥーマウスを行いたくない場合や出来ない場合は、気道の確保と心臓マッサージだけで救急車を待つのも認容されます。
  4. 3つの「き」(い、せ、うご)を「循環のサイン」といいます。市民が行う心肺蘇生では頚動脈の脈のチェックは必ずしも必要ありません。
  5. 心臓マッサージ:患者の両方の乳頭を結んだ線の真ん中の骨のところ(胸骨)に両手を重ねて置き、肘を伸ばして真上から胸が5cmぐらい沈むほどに荷重します。100回/分の速さの心臓マッサージ15回に対し、人工呼吸2回を行います。1分ごとに循環のサイン(4を参考)を確認しましょう。
  6. 息を吹き返した場合でも、また止まる場合がありますので監察は怠らないようにしましょう。

    適切かつ迅速な心配蘇生は患者の社会復帰率を高める最も大切な要因となっております。最近は自動体外式除細動器(AED)の設置とあいまって、いろいろな講習会が開かれ、心肺蘇生に関する書籍も充実してきております。是非、検討してみてください。
    参考文献:BLSヘルスケアプロバイダー (2004年、中山書店)
     
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