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「核医学について」

放射線診断科部長  古 澤 哲 哉

 「核医学」と云うと、皆さんはどの様な医学を連想されるでしょうか?日本は唯一の被爆国であり、他国よりも「核」という言葉に対するアレルギー的感情が強く、核医学に対しても一般的に怖いという印象があるかもしれません。しかし、日本核医学会という有限責任中間法人があり、会員数約3,600名の団体で、学会認定の専門医制度もあり、特別な医学ではありません。
 放射線科の分担する画像診断は、X線CT、MRI、単純写真など多くの撮像機種、撮像方法があります。しかし、それらの画像診断法はほぼ全てが形態診断です。形態診断というのは、大まかに言えば、その病変の外観だけを見て、悪性であるとか良性であるなどを判断することです。例えれば、人間でも外観だけでは悪人か善良な市民かは判断できない、と同じことです。よって、そのような形態診断だけでは病変の本質を探ることは難しいと言わざるを得ません。最近では、MRIの拡散強調像などで、機能的な診断法が出現してきていますが、まだ発展途上です。そのような形態的な画像診断法とは異なり、病変の機能を見るような機能的診断法を主体とするのが核医学です。
 実際に、病院に入ると、通常放射線科の撮像エリアの近くに、「アイソトープ」とか、「RI」とか、そのような表示の画像検査室があります。放射性同位元素という、ガンマ線(放射線)を放出する少量の薬(放射性医薬品)を静脈注射し、検査用のベッドの上で静かに横になっている間に、ガンマカメラで体内の様子を画像(シンチグラム)にする方法です。核医学検査では、1回に約1〜15ミリシーベルト(mSv)の放射線を受けます。私たちは、日常生活においても、1年間に約2.4mSv(世界平均値)の天然の放射線を受けていますので、全く問題にならない程度の放射線です。
核医学というのは、形態だけでは判定できない、病変の機能(本質)を探ることのできる唯一の画像診断法(学)であり、さらに発展していくことが期待されます。
以上、簡単ですが核医学について解説いたしました。
詳細は、「日本アイソトープ協会」や「日本核医学会」のホームページをご覧下さい。
 参考文献:核医学検査Q&A (発行:日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会)

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