ろうさいニュース

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「君知るや南の国−マレーシアにおける海外巡回検診」

歯科口腔外科部長  武 藤 祐 一

当院の母体である労働者健康福祉機構では昭和59年から開発途上国の中で医療面の不安の多い地域を選定し、現地法人組織(日本人会)の協力を得ながら、海外派遣労働者とその家族の健康診断を行ってきました。本年は前期にアジア、アフリカ、東欧、中期にアジア、中近東、インドネシア、東欧が予定されています。
 今回、前期アジアチームの一員として6/2-13マレーシアに行ってきましたので、その概要をご報告します。
 チームは医師2名、看護師1名、事務1名の4名からなります。今回は歯科検診のリクエストも多いところから、私は主に口腔の検診を行いました。
 マレーシアというと今の若い方にはなじみのうすい地域でしょうが、第二次大戦をご存知の皆様にはマラッカ、ボルネオなどは有名ですし、山崎 朋子の著書からサンダカンも有名です。マレー半島とボルネオ島の北部からなり、気候は熱帯雨林気候で、当然ですが、四季はなく、一年中半袖シャツで過ごせます。マハティール前首相は2020年に先進国の仲間入りをすべく、奮闘しましたが、まだ道半ばです。先住民、マレー人、華僑、インド人で構成される多民族国家であり、国語はマレー語ではありますが、諸民族がそれぞれの言語を話し、英語が共通言語になっているという日本では想像できないような複雑な国情を有しています。
 検診地は東からボルネオ島のコタキナバル、クチン、マレー半島のイポー、ペナンの4カ所であり、ほぼマレーシアを縦断します。検診は海外派遣労働者、家族、日本人学校の皆様が対象になります。各地で50人、ペナンでは90人の検診を行いました。当地では虫さされが多く、特に蚊が媒介するマラリア、デング熱に感染する可能性があります。歯科的にはほぼ日本と同様に50〜60歳以上の方に重篤な歯周病が多く、学童のう蝕は少ない傾向でした。幼児、学齢期の子供のはえ変わり、矯正治療、う蝕治療に関する相談が大半を占めました。現地在住者は当地の歯科医の日本との治療の違い、言葉の障壁が高く、症状の説明や治療の説明が理解できないことにストレスを感じておられました。
 最後に旅行の楽しみに食事がありますが、中華、海鮮料理がとてもおいしく、食事に関しては全く問題なく過ごすことができました。高温多湿の気候ではありますが、同じアジア人であり、居心地がよく、3か月程度であれば居続けられる感じがしました。実際、派遣された方で余生をこちらで過ごされる方も多いことをお聞きしました。夕陽は新潟もきれいですが、やはり南国の夕陽は格別で、つかの間ではありますが、異国情緒に浸り、当地を後にしました。

コタキナバルの夕陽 クチンにて
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