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脂肪肝(しぼうかん)にご用心!?

消化器内科医師
(専門分野:肝臓)   麻植ホルム 正之

 脂肪肝にご用心と聞いて、えっと思われた方は多いかもしれません。食生活の欧米化、右を向いても左を向いても食事があふれ飽食(ほうしょく)の時代になった現在、メタボリック症候群、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病が蔓延(まんえん)しています。肝臓に脂肪がついてしまう脂肪肝は肝臓の生活習慣病と考えられておりその数は年々増加しています。
C型肝炎やB型肝炎は肝硬変になって、ゆくゆくは肝臓がんになる可能性がある病気だということは最近の報道で広く皆さんも知っていることと思いますが、C型やB型肝炎はウイルスに感染しなければ大丈夫なので、しっかりとした予防と治療により今後減少してくることが予想されていますから肝臓がんで亡くなる人も減るのではないかと言われています。
そこでこれからは脂肪肝で肝臓がんが増加する可能性があると肝臓専門医の間で話題になっています。ただ脂肪肝すべてが肝硬変や肝臓がんになるわけではありません。脂肪肝には大きく分けて3種類があります。

  1. 単純性脂肪肝:過剰に脂肪が肝臓に蓄積するが、病的意義があまりないもの
  2. アルコール性脂肪肝:酒飲みの脂肪肝で、飲みすぎると肝硬変、肝がんになる
  3. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH=ナッシュ)

 3番目の脂肪肝はナッツみたいなかわいい名前をしていますがこの子がなかなかのくせもので肝臓専門医の頭を悩ませています。肝硬変・肝臓がんになる可能性があるといわれているのが3.です。
1〜3は腹部超音波検査で肝臓を観察しても白っぽくキラキラして同じに見えますし、血液検査をしても肝機能が少し悪いだけですから見分けがつきません。今のところ診断をするには肝生検(腹部超音波検査(エコー)で肝臓を見ながら肝組織を細い針で採取する)しかなく当院では入院して肝臓を調べています。NASHになるくわしい原因やNASHの治療法はいまだ決まったものがなく、現在世界的に研究が行われている状況です。
NASHは肝臓の細胞に脂肪が蓄積したために肝細胞に強いストレスが加わり炎症がおき肝炎となり肝硬変、肝臓がんになるとおおまかに考えられています。医者や患者に今できることは診断することも重要ですが肝臓に脂肪をつけないこと、また肝機能を悪くしないことが重要です。定期的な人間ドックや血液検査、腹部超音波検査(エコー)がおすすめです。すでに生活習慣病のある人はご用心を!!

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