ろうさいニュース

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「イレウス」について

第3外科部長  井 上  譲

 

 この原稿を書いている最近のニュースは、新型インフルエンザの国内発生で持ち切りです。みなさんも興味のあるところと思うのですが、新型インフルエンザについてはまだわかっていないことも多く、記事にするのを断念しました。外出を控え、手洗い、うがいなど予防に努め、発熱や風邪の症状で受診を希望されるときには、医療機関に行く前にぜひ電話で、病院または保健所に受診について確認いただきますようお願い致します。

 今回は、救急外来で遭遇することが多い症候のひとつである「イレウス」についてです。イレウスとは腸内容の肛門側への通過が障害されている状態のことで、いわゆる「腸閉塞症」です。症状は、お腹が張る、痛い、吐き気がする、吐く、便やガス(おなら)が出ない、などです。お腹の手術で生じた腸の癒着によるものや強度の便秘によるものが多いのですが、隠れた病気のサインであることがあり、侮ることはできません。
 イレウスでは多くの場合、腹痛は比較的軽く、痛みの強さに強弱の波があり、治療は入院の上、腸の内容物を増やさないように絶食をして、必要な水分補給のために点滴が必要となります。さらに鼻から胃または小腸へチューブを入れて、腸液を体外へ引き出すこともあります。これらの保存的な治療でガス(おなら)も便も出るようになり、2,3週間で退院できるようになるという経過が多いようです。
 改善しない場合や何度も繰り返す場合には、イレウスの原因である腸自体の癒着や折れ曲がりを戻したり、腸を外部から圧迫する索状物や腸の一部を切除するなどの手術が行われます。
 イレウスの中でも、治る気配がないくらい激しい痛みを伴う場合には、腸の血流が障害されて腸が腐ってしまっていたり、胃や腸が破れて腸液や便がお腹に広がった腹膜炎になっていたりすることがあり、治療として緊急手術が必要となります。
 症状が軽くても検査を進めていくと、大腸癌などの他の病気が見つかることがあります。お腹が張る、痛い、吐き気がする、吐く、便やガス(おなら)が出ないなどの症状がでてきたときは、症状の程度がどうあれ、あまり我慢せずに病院を受診し、診断の上、治療いただくことをお勧めします。

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