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大腸ステントについて


消化器内科医師  野 村 亮 介

 今回はステントという形状記憶の網状金属の管についてお話しします。が、本題に入る前に癌の話題を少しだけします。生活の習慣や食生活の変化に伴って、健康への関心が年々高まっている一方で、糖尿病、心疾患、脳卒中などの生活習慣病、そして『がん』という恐ろしい病気にかかる人も増えています。一生涯でがんにかかる方は、男性(53%)、女性(41%)、共に2人に1人という高い数値となっており、『がん』は日本人にとって非常に“身近な病気”だと言えます。そのうち大腸癌に関して言うと2006年の段階では、約107,800人の患者さんが存在すると推計されています。そして2012年の罹患数は約126,000人程度と予測され、急激な増加傾向を認めています。
 そんな大腸は、しゃくとり虫のような動き(ぜん動)をして便やガスを肛門へ送り出す通り道の役割を果たしている臓器です。その通り道に癌ができると,食べたものやガスがつっかえて通らなくなります。便やガスが出なくなることは勿論のこと、便がドンドン溜まってくるため、おなかが痛くなって膨らみ,しまいには溜まった便を口から吐いてしまいます。こういう状態を腸閉塞と言います。
 そうなってしまうと、ドンドン溜まってしまった便を外に出す必要が出てきます。従来であれば、その便を外に出すためのチューブをおしりから入れ、そのまま入れっぱなしにしなければなりませんでした(しっぽみたいです)。その後に人工肛門造設や場合によっては緊急手術となっていました。
 そこで登場したのが、最初に少しお話したステント(形状記憶の網状金属の管)です。大腸でのステント治療の仕組みは、閉じた状態のステントを内視鏡で確認しながら、おしりから内視鏡と一緒に挿入します。そして、つっかえている場所で開きます。すると大腸の通りが回復し、数日で食事がとれるようになるというものです。自力で排便もできるようになります。もちろん内視鏡を使うのでお腹を開くことはありません。ただ、腸は長い臓器であり、ぜん動もあるため、どこにでも置けるわけではありませんが、ご高齢な方や手術を受ける事が難しい方などの生活の質を落とさない新しい治療の選択肢として考えられています。そのステント治療を当科でも行っています。
 もちろん『ステントのお世話になる』その前に、大腸内視鏡検査を受けて予防に心がけることが一番大事ということは言うまでもありません。

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