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鼠径ヘルニア「脱腸」について


外科副部長  松村 勝

 鼠径部とは両足の付け根の部分に当たり、ヘルニアとは、先天的あるいは後天的な誘因により生じた腹壁あるいはその他の部位の欠損,間隙より臓器や組織が脱出したものをいいます。これが腹部であれば、脱腸と呼ばれます。腹圧がかかった状態(立った時、グッとお腹に力を入れた時、咳をした時)での膨隆であり、腹圧が解除されればヘルニアは消失します。
 鼠径ヘルニアは成人では男性の発生頻度が年齢とともに上昇し、40歳以上で頻度が増えます。男女比は5:1で男性が多いです。鼠径ヘルニアの症状としては鼠径部の違和感が主ですが、時に軽い痛みや吐き気等を生じることがあります。時に、嵌頓(かんとん)という状態を呈することがありますが、嵌頓とは、ヘルニアの内容物が元に戻らない状態で、緊急手術の適応になります。
 鼠径ヘルニアは筋肉の問題なので、内科的に薬で治療することはできないので、手術を行う必要があります。鼠径ヘルニアの手術は、外科手術の中でも最も頻度の高い手術です。手術の方法は、鼠径部の皮膚を4〜5 cm切開し、皮膚側から修復する前方法が主流ですが、1990年代から腹腔鏡の手術(お腹の中を内視鏡で観察する手術)が導入されました。前方法との違いとしては、傷が小さく整容面で優れる、術後の痛みが少ない、ヘルニアが生じている穴の正確な位置と大きさが確認できる、片側だけでなく両側の観察が可能、などです。ヨーロッパの鼠径部ヘルニアの手術に対する治療ガイドラインでは、従来の方法と比較し、腹腔鏡手術が有用であり推奨されています。腹腔鏡手術が行えない条件は、全身麻酔が不可能、下腹部の開腹手術歴があるです。
 現在、当院外科では2010年から腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術を導入し、これまでに50例以上の治療経験があり、前方法と比較し、入院期間、術後疼痛などで非常に良好な結果を得ています。鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は新潟県内では数施設でしか行われておらず、上越地域では当院と他一施設のみです。ご希望の方は、一度外来を受診され、ご相談ください。

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