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指狭窄性腱鞘炎について


第5整形外科部長  小熊 雄二郎

 指は腱によって曲げ伸ばしをすることが出来ます。指を曲げる腱を屈筋腱といい、伸ばす腱を伸筋腱といいます。
 屈筋腱には、腱の浮き上がりを押さえる靭帯性腱鞘というトンネルがあります。この屈筋腱とトンネルとの間で炎症が起こるとトンネルの相対的な狭小化が起こり指の付け根に痛み、腫れ、熱感などが生じます(中には指の付け根の痛みよりも指先の関節(DIP・PIP関節)の動きの悪さや痛みを訴えるケースもあります)。これを腱鞘炎と呼び、進行すると指の伸展あるいは屈曲の際に弾発現象が起こりこれをばね指と呼びます。手を酷使する職業の人や更年期の女性に起こることが多く、妊娠時,産後に生じることもあります。右手に多く、指別の発生頻度は母指>中指>環指>示指>小指の順となります。又、糖尿病や透析患者にも発生します。
 鑑別診断としてはリウマチ性腱鞘炎,結核性腱鞘炎,化膿性腱鞘炎などの腱鞘炎のほかに屈筋腱の部分損傷などもあげられます。治療は、まず局所の安静と腱鞘内へのステロイド注入といった保存療法を行います(指のこわばりや拘縮がある場合はリハビリを追加することがあります)。一般的にステロイド注射は1〜2週間隔で2回行い、それでも疼痛が残存する場合や、弾発現象が残存する場合は手術(腱鞘滑膜切除術)の適応となります。注射によって一時的に症状が改善するため何度(3回以上)も注射を希望する患者さんがいらっしゃいます。多数回のステロイド注射は効果がほとんどないと報告があり、更に腱にとっても過度のステロイド使用は望ましくありません。
 手術のタイミングは専門医とよく相談し決めていただきたいと思います。手術は、局所麻酔でできます。手術時間は5〜10分ほどです。手術翌日から創を濡らしたりしなければ身の周りの簡単な作業はできます。入院も必要なく術後1〜2週間で抜糸となりその後は通常の生活・仕事に復帰できます。
 上記症状が認められ腱鞘炎(ばね指)を疑いましたらまずは専門医にご相談ください。

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