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ロコモと変形性膝(ひざ)関節症


第2整形外科部長  田西 信睦

ロコモティブシンドローム、略してロコモをご存知でしょうか。骨、関節、筋肉などの運動器の機能が衰えて日常生活の自立度が低下し要介護の状態や要介護の危険がある状態を言います。日本は超高齢化社会になりましたが長寿に運動器の耐用年数が追いついておらず天寿を全うする前に歩けなくなり人生最後の数年間は寝たきりやそれに近い状態となる人が増えています。このロコモの代表的な原因疾患の一つが変形性膝関節症です。

変形性膝関節症は簡単にいうと膝関節の軟骨がすり減って痛みを生じ歩行に支障をきたした状態です。原因は主に老化ですが、この他に膝への過重な負荷(肥満、重労働、激しいスポーツなど)、膝関節内の外傷の既往などが原因になります。治療は鎮痛薬の内服や消炎外用薬の使用、ヒアルロン酸製剤の関節内注射、足底板装具療法、膝周囲筋訓練や日常生活指導などの保存的治療をまず行います。肥満の人はダイエットをしないと症状の改善はあまり期待できません。老化を治すことは無理ですので全く痛みをなくすような治療法は存在せず、日常生活や趣味での活動レベルを調節しながら上手につきあっていける程度の痛みに改善することを治療の目標にします。

関節症が進行して関節軟骨がすり減りきってしまい土台の骨が広い範囲で露出した末期関節症の状態になると非常に強い痛みとなるので手術を考慮します。65歳以上の末期関節症の人には人工膝関節置換術を勧めています。当院でこの手術を受けている人の平均年齢は75歳くらいです。内科的合併症などで手術ができない人もいますが、これについては術前に検査を行い評価します。

当院では人工膝関節置換術をこれまでも積極的に行ってきましたが、高齢者の増加に伴い今まで以上にニーズが高まっているため昨年(H25年)4月に人工関節センター(膝と股関節の人工関節手術を行います)を開設しました。昨年1年間では108例の人工膝関節置換術を行いました。医師をはじめ病棟、手術室、リハビリテーションとも経験を十分積んだスタッフが揃っています。

末期変形性膝関節症に有効な治療法である人工膝関節置換術はロコモ予防の一助になります。膝痛でお困りの高齢の方は整形外科医にご相談下さい。

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