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当院における肺癌治療について


呼吸器外科部長  岩浪 崇嗣

肺癌の治療は現在でも困難な状況です。1980年代に悪性新生物が全死因のトップとなり肺癌に関しては2000年には全悪性新生物における死因のトップであり続けている状況です。また、肺癌の罹患率(がんにかかる割合)も上昇を続けています。治療成績に関しても生存率(あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標)は2003年〜2005年の統計で男性では、肺癌は25%。対して胃癌は64.2%。女性では、肺癌は41%。対して胃癌は61.5%と他の癌よりも治療成績が不良な状況です。肺癌の特徴として、全身転移が起こりやすいことが挙げられます。しかし、早期に発見することで、手術治療が行われたstage IAの5年生存率は80%を超えます。これは、がんの治療における早期発見の重要性を示唆しております。現在、検診では胸部レントゲンによる肺癌検診を行っていますが、当院では、低被爆である低線量CTによる肺癌検診を導入しております。早期に発見することで、多くの患者さんを救いたいと考えています。

当科では全人的な医療を目指し、呼吸器内科・外科、放射線診断医・治療医、病理診断医と連携をとりながら治療を行っております。外科治療に関しては、胸腔鏡手術が導入され、全国に普及しています。当院でも以前では20cm程度の創が、約5cm程度となり、全国の病院で研修を行い、習熟に努めることで、手術時間の短縮・出血量の減少が図れました。術後の早期回復、早期退院が可能となり、手術から1週間程度で退院となっている状況です。疼痛などの合併症の頻度も減少し、早期な社会復帰が可能となりました。また、高齢者に対しても低侵襲なため手術適応が拡大しています。内科治療に関しては、抗癌剤・分子標的治療薬の目覚ましい進歩が挙げられます。手術困難または再発に対する治療の奏功率・生存率ともに改善しております。個別化治療が行われ、遺伝子検索を行うなど、個々の患者さんに応じた治療を行っています。

肺癌の治療は現在でも困難な状況ですが、それを改善すべく、多くの研究会に参加することで、日々進歩する医療に対する最近の知見を取り入れ、より良い医療の提供を目指し、新潟労災病院呼吸器外科一同、日々努力しています。

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