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非歯原性歯痛


第2歯科口腔外科部長  松井 宏

歯科医院を受診する理由の中で、最も多いものは「痛み」だと思います。その多くは、歯の中の神経(歯髄)や歯の周りの組織(歯周組織)が原因となる痛みで、「歯原性歯痛(しげんせいしつう)」と呼ばれます。これは痛みの原因となる歯や歯周組織から、三叉神経という神経を伝って脳に痛み信号が送られ歯痛と認識されます。一方、「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」はこのメカニズムによらない痛み、つまり歯や歯周組織が原因ではないのにも関わらず、そこに感じる痛みです。

「非歯原性歯痛」は(1)関連痛によるもの、(2)神経障害によるもの、(3)中枢での神経伝達物質などの変化や情報処理過程の変調、の3つに大別されます。

(1)は、痛みを伝える神経がそれに近い部位の神経と絡み合うことによって、痛みの発生源と異なる神経支配の範囲に感じられる痛みのことで、顔面の筋肉の痛みから起こる歯痛、ある種の頭痛に伴って生じる歯痛、心筋梗塞などの心疾患由来の歯痛、蓄膿症にからむ歯痛があります。(2)は、傷んだ神経が過敏に反応するようになることなどで生じる現象で、三叉神経痛など発作的に起こるものと、顎骨の骨折などで神経を障害した後に起こるような持続的なものがあります。(3)は、精神疾患や心理社会的な問題からくる痛みや、一部の原因不明とされる痛みがあります。

「歯原性歯痛」は、痛みの発生源とそれを感じる部位が同じであることがほとんどで診断がつきやすく、その部位を治療すれば痛みがなくなります。例えば、虫歯で痛む歯も、削って詰めることで痛くなくなることは経験があると思います。

一方、「非歯原性歯痛」は、痛みの原因と痛みを感じる部位が違うだけでなく、痛みが慢性化する場合や、いくつかの原因が複雑に絡み合っていることもあり、診断が難しいことがよくあります。痛みの特徴をしっかり問診し、感覚検査やレントゲン・CT・MRIによる画像診断など、総合的な判断が求められます。誤って正常な歯を削ることがないよう、慎重な対応が必要です。

治療はその原因によって様々です。内服薬や注射による治療、日常生活の行動療法などがありますが、歯科だけでは根本治療ができないものもあります。そういった場合は、他科との連携が重要になってきます。

「非歯原性歯痛」はまだ認知度が低いと思いますが、原因が良く分からない痛みでお悩みの際は、ご相談下さい。

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