やっと冬の寒さもピークを越え、これから春に向かって暖かくなってくるのが待ち遠しいですが、毎年春の4月~6月に職場健診など受けるという方も多いかと思います。検診で行われる尿検査って、いったい何を調べてるのだろうと思ったことはないでしょうか。尿検査は小中学生の学校検診から何回も受けていると思いますが、尿検査は腎臓の病気を発見するための大事な検査になります。腎臓の主な働きは、生きていくうえで産生される不要な老廃物や水分を血液から取り出して、尿として体の外に出すことです。なので、尿検査の異常は腎臓の病気の兆候となることが多いです。尿検査の中では、尿蛋白、尿潜血、尿糖が重要で、尿糖は腎臓というより糖尿病が原因となりますが、尿蛋白、尿潜血は腎臓や尿管の病気に関連することが多いです。腎臓の病気は数年から数十年かけてゆっくり進行することが多いのですが、代表的な疾患に慢性糸球体腎炎があります。腎臓が悪くなると透析療法を受けなければならなくなり、最近は新規に透析導入になる原因の1位は糖尿病性腎症ですが、透析患者全体で一番多い透析の原因は慢性糸球体腎炎で、その慢性糸球体腎炎という病気の中で一番多いのがIgA腎症という病気になります。IgA腎症は中高生から成人まで幅広い年齢に起こる腎臓の病気で、原因は不明な部分が多いです。この病気は、最初軽い血尿がでて、数年経つと徐々に尿蛋白もでてきて、5年、10年と経つごとにゆっくり腎臓の働きが低下してきます。腎臓の機能がどれくらい低下してるかは血液検査でもある程度は分かりますが、血液検査で腎臓が悪くなってると分かる時は、既に腎臓の病気がある程度進んでしまってることが多いです。また腎臓は1~2割ぐらいまで機能が低下しないと自覚症状にも出にくく、既に悪くなった腎臓を回復させるのは今の医学では困難です。
なので、早期発見、早期治療のために尿検査が重要になります。もちろん、検診の尿検査は完璧な検査ではなく、尿の濃さにもかなり影響を受けます。検診前に水分摂取を控えていると濃縮した尿になり、腎臓に問題がない人でも尿蛋白が(1+)になることもあります。逆に水分を多くとって検査すると薄い尿で尿蛋白が陰性に出やすくなります。必ずしも検尿異常イコール腎臓の病気というわけでもないので、もし検診で尿蛋白、尿潜血などがひっかかったら心配しすぎず腎臓内科に受診してみてください。
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