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当科での大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)について


消化器内科部長  前川 智

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは、近年開発・発展してきた治療法で、従来は外科手術が必要であった大きな病変や内視鏡切除が困難な病変に対して、専用の電気メスを用い、少しずつ病変を剥離していくことで、高率に病変を一括切除することができ、高い根治が望める新しい内視鏡手術です。ESDによる内視鏡手術は、2006年4月早期胃がんを対象に、2008年4月には早期食道がんを対象に、2012年4月には早期大腸がん(前がん病変としての腺腫を含む)を対象に保険適応となりました。

当科では、早期胃がん、早期食道がん、早期大腸がんの内視鏡手術(ESD)を積極的に行っており、どんな大きさの胃がん・食道がん・大腸がんでも、深達度の浅い早期がんであれば、一括で切除することができ、腹や胸を切ることなく治すことができるようになりました。

そんなESDですが、早期大腸がんに対する「大腸ESD」は、高度の技術が必要とされ、なかなか普及していないのが現状です。「大腸ESD」の難易度が高い理由として、大腸壁が3ミリと非常に薄いこと、大腸はひだや屈曲が多く存在することなどがあげられます。

「大腸ESD」の適応は、内視鏡治療の適応病変のうち一括切除が必要な病変で、従来のスネアによるEMR(内視鏡的粘膜切除術)では分割となる病変と定義されています。簡単にいえば、「大腸ESD」は、早期大腸がんが疑われる大きな病変が対象になるというわけです。私達内視鏡スタッフは、上越地区においても、低侵襲で有効性の高い最先端医療である「大腸ESD」を患者さんが安心して受けて頂けるように日々努力しています。最近では10㎝以上ある大きな早期大腸がんの数症例を無事一括切除できました。

当科での「大腸ESD」は、内視鏡の先端から出して使用する電気メスとして、dualナイフを主に使用し、必要に応じて、ITナイフnano、SBナイフJrを使用していますが、ESD技術の向上に伴い、dualナイフ1本でESDを完結できることが多くなりました。難易度が高い病変では、クリップ&スネア法という病変の牽引術を用い、スムーズに病変を切除できる様々な工夫も行っています。

上越地区では「大腸ESD」が施行できる病院が非常に少ないこともあり、近隣の開業医の先生から多数の症例を御紹介頂いています。おかげさまで、朝日新聞出版の「いい病院2016」という雑誌の大腸がん内視鏡治療(大腸ESD)ランキングで、北陸・甲信越で8番目に多い病院として取り上げられました(新潟県では新潟大学医歯学総合病院についで2番目となっています)。

当科では、内視鏡スタッフ全員が協力して、1症例1症例を大切に、全力で取りくみ、患者さんが出来るだけ待つことなく、「大腸ESD」を受けて頂けるように努力していきたいと思います。近隣の開業医の先生には、引き続き当科にESD症例を御紹介頂きたく存じます。

大腸ESDに使用するナイフ


当科での大腸ESD


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