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海外薬事事情(アジア)


主任薬剤師  伊藤 仁

海外旅行をする際は薬を持っていきますか?いつもの飲み慣れた薬の方が安心ですね。海外で薬が必要になったのならその国の薬で治すという強者もいらっしゃるかも。
海外の医療、薬のことを解説していきます。

タイ王国
医療に関しては、タイは近隣のアジア諸国の中でも先進国です。医療技術はアメリカや日本の最先端とまでは言えませんが、安心して医療が受けられる高い技術を持っています。しかし、日本と違って民間の病院はすべて自己負担が基本です。タイにも健康保険制度があり、労働者ならタイ人・外国人に関係なく社会保険が適用されて指定病院で医療が受けられます。タイでは医薬分業が進んでおらず、ほとんどが院内薬局、または処方箋なしで医療用の医薬品を購入できます。薬局だと薬剤師が問診して症状に合わせた薬を販売してくれます。タイの薬局では医療用の薬品を処方箋無しで薬剤師の責任の下に販売することが認められています。タイ政府はすべての薬局に薬剤師を常駐させようとしていますがうまくいっていません。日本人の人気の観光国で店先には日本語の看板が出ていたり、通訳がいる店もあります。

カンボジア王国
カンボジアの保険制度は貧困層で指定された医療施設で受診した場合、病院までの交通費と受診料について保証金を得ることができます。だが、国内医療の信用がないため有効に活用されていません。都市部には外国資本が入った総合病院がありますが富裕層、外国人が利用するのみです。カンボジアでは医師の診察を受けたくとも医師がいない環境で暮らしています。ポルポト政権下、医療制度は崩壊し政権が陥落した時カンボジアに残された医師は40人だと言われています。ポルポト派が消滅して20年医師不足、医療技量低下、病院不足が続いています。
カンボジアには薬局はたくさんあります。ですが水準は低いし高度な教育を受けた薬剤師は少ないと言われています。自国の製薬会社は8社ほどで国内で使用する医薬品の85%は輸入に頼っています。実際に薬剤師でないものが医薬品を販売し国の認可を受けていない医薬品が出回っています。カウンターフィット薬(偽造医薬品)は減ってきましたがサブスタンダード薬(規格外医薬品)は抗生物質などに存在しています。つまり熱帯の劣悪な環境で保管方法が悪いのが原因です。

紙面の関係で2カ国の紹介です。海外渡航される際は医療保険に加入されることをお勧めします。

最後に、世界人口1千人当たりの薬剤師数ランキング(世界保健機関 WHOより)
1位はモナコ 2.709人 2位は日本 2.153人 世界平均は0.409人
タイは88位 0.130人 カンボジアは96位0.103人となっています。

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