ろうさいニュース

このウィンドーを閉じる

空気が読めない超音波


主任検査技師  佐藤 まゆみ

今回は超音波(エコー)検査のお話です。超音波とは人間の耳には聞こえない高い音のことをいい、プローブという超音波を発する装置を当てながら臓器の形や大きさ、内部の状態を観察します。医師も行いますが、当院では主に臨床検査技師が検査を担当しております。

プローブから発された超音波は、臓器に当たるとその一部は進んできた道を戻るように跳ね返ってきます。跳ね返らない超音波はそのまま臓器を進み、その奥の臓器に当たるとまたその一部が戻ってきます。その繰り返しで画像が合成されていきます。

エコー検査では脂肪肝の判定がお馴染みですが、脂肪を蓄えた肝臓の細胞粒子は超音波が強く跳ね返ります。そのため、脂肪肝では真っ白なエコー画像が出来上がるという訳です。因みに、お酒をたくさん飲む方の脂肪肝と運動不足や油脂の摂り過ぎが原因の脂肪肝ではエコー画像の特徴が少し異なるので、検査を受ける時に「お酒はあまり飲まないんだけどねぇ」と仰っても、エコー画像から大酒家であることが分かってしまうことがありますのでご注意下さい。

超音波検査装置は年々機能が向上しており、画像解像度が飛躍的に向上しました。学生だった当時は“骨は超音波が通りにくいのでエコー検査には向かない”と習いましたが、今ではある程度の観察は可能で、その特徴が診断に利用される様にもなりました。超音波検査の領域は進歩が目覚ましく、超音波検査に携わってから何年も経ちましたが、今でも毎日が勉強です。

超音波は隙間無く観察できるのが利点ですが、体の端はプローブが当たりにくくなるので、臓器の隅を見るのが少し困難です。しかし、他にもCTやMRIという頼もしい画像検査がありますので、それぞれの検査を担当させて頂く技師がお互いの検査の性質を理解し、補い合いながらできる限り多くの情報を診察室にお届けしようという思いで検査業務に当たっております。

さて、細い血管の小さな血栓を映すことさえ可能な超音波ですが、空気を進むことが非常に苦手です。肺や腸管ガスどころか、プローブと体の隙間の空気さえ通るのが困難なので、検査の際にはゼリーを塗らないと全く画像になりません。

エコー検査は万能です。と言って締めくくりたかったところですが、中々に難しく、そういった意味でも超音波は「空気が読めない」様です。とはいえ、エコー検査は安全性に優れておりますので、安心して検査をお受け下さい。

このウィンドーを閉じる