健康と普段の食事が切っても切れない関係にあるのは誰にも理解できる。しかし、「どんな食生活が本当に私に(自分の家族ではなく私に!)適しているのか?」この質問の答は難しく、「個人によって異なる」としか言いようが無い。
ひとつ明確な事がある。「食後高血糖を来す食生活は健康に悪い(これを事実としなくては、これ以降話は続かない)」。2型糖尿病、心臓血管疾患、肝硬変、肥満、癌、さらに認知症のリスクとされる。問題はここからだ。食後高血糖の危険性は今や常識なのに、自分にとってどの食べ物、どんな食べ方が食後高血糖を来すか不明確なのだ。食後高血糖(危険か安全範囲か?)、これは仮に同じ食事をしても個人差がある。個人の遺伝的背景、ライフスタイル、インスリン抵抗性(インスリンが膵臓から出ているのに血糖値が高いまま)、内分泌機能などホルモン環境、そして、忘れていけないのが腸内細菌、腸内細菌叢が各自で異なるのだ。自分が飼っている腸内細菌が食後高血糖に大きな影響を与える事を知らないヒトは多いはず。
2015年、科学雑誌Cell (インパクトファクター28点の化け物雑誌) に掲載された驚きの結果がある。この際、それと全く同じ順序で、私達も健康になろうでは無いか。そこに示されたやり方の順序(1)−(4)に示す。
(1)フリースタイルリブレ を内科で装着してもらい(図1)、自分の血糖値をモニターしよう。最初の1週間はいつもの食事だ。その間、食べた食事、間食、飲み物含め、すべて写メしておくべし。「こんな食べ物、飲み物でまさか?」「ええ!おお?」、という驚きの連続であり、血糖値
150を越えたら食後高血糖の範疇と考えれば良い。「ここの玄米と無農薬野菜好きなのに」とか、「ここの自家製パン、健康的だと思っていたのに」、「ええ!手打ち蕎麦でこんなに」などの驚きの連続となる。大好きなレストランへも行き、いつもの食事も注文し確認すべし。大好きなカレーライスも。
(2)さて2週目は試行錯誤だ。好きなモノで、どうしても血糖値が上がってしまう場合、2分の1,4分の1と量を減らしチェックすべし。ビール、日本酒、ワイン、ウイスキー、野菜ジュース、微糖コーヒー、体に良いと信じている大好きな野菜、青汁、カロリーオフ食品、サプリなどもチェック。マヨネーズ、和風ドレッシングもチェックだ。嫌いだけど「体に良い」と食べさせられていた食品、そう、フルーツグラノーラとタップリ果物の入ったヨーグルトやサラダだ。好きだけど絶対に「体に悪い」と思い込んでいた食品も試そう。ハンバーグ・サーロインステーキ、トンカツ、鶏皮、チーズ、卵(5個は食べてみよう)、トロ、いくら、ウニ、など、さらにバターや各種油脂だ。食後高血糖が確認できたとしても、どうしても食べたい食品は食べる順序を変えよう。食べる順を変え高血糖を予防出来る事が理解できるだろう。これは楽しい冒険である。2週間の食事体験なんてあっという間に終わってしまう。さてCell 論文ではここで検便し、腸内細菌をチェックする(これは省略)。意味が解らない皆さんのために図2、3に自らの体験を解説する。
(3)次に医師の代わりに自分の食事内容に介入しよう(ここが最も大切な部分で自分の人生を変えるチャンス到来である)。つまり、食後高血糖が起きない食品を自分の食事・間食の中心に置き(おそらく肉・魚、つまり脂質・蛋白質主体の食べ物となるが、個人個人異なる可能性は高い)、その上で、経済的で、しかもお腹いっぱい食べる工夫をするのだ(毎食満足出来ないと継続出来ない)。食生活の変化で自分の体調、体重、睡眠の質がどう変化するのか観察しよう。肌がキレイになったかどうかも大切なポイントだ。さて、ここで検便、再度腸内細菌をチェックする(これも省略)。そして、この食事を継続しよう。
(4)最後に、自分の育てている腸内細菌が、良い方向に変化し(この確認は省略)、体調(肩こり、高血圧、便秘、睡眠障害など)の改善、慢性疾患自体の改善、そして心配していた病気のリスクが消失したことを実感しよう(こうなるヒトが多いと私は信じています)。
皆さん。大好きなご飯・パンを諦めろと言っているわけでは無い。ケーキ、デザートも果物だって大丈夫。要するに食べた後に高血糖状態にならなければ良いのだ。自分で自分の体の中で起こっている事を徹底的に知るのが大切だ。管理栄養士さん、糖尿病を扱う看護士さん、多くの医師の方々ですら、自分自身に食後の危険な高血糖があるのかどうかなんて本当はご存じないはず、これは現実なのだ(不思議な話ですが、私は運動すると血糖値が上がります。何でもやってみなければ分からないものです)。
さて、上記の仕事(自分の人生を変える)を、決断してからどのぐらいの時間がかかるのかのシミュレーションしてみましょう。
(A) 労災ニュースを持ち帰り、家族に「私も試してみたい」と話す。1日がかりです。Cell. 2015 Nov 19;163(5):1079-94. Personalized Nutrition by Prediction of Glycemic Responses. VIDEO ABSTRACT付き. を読む。川口 誠の読み方、解釈の仕方が正しいかどうかチェックが必要となります。これはやらないかも知れませんね。でも解釈の間違いは是非指摘していただきたいです。
(B) 糖尿病でインスリン注射をされている方は、保険適応となりますのでかかりつけ内科医にお尋ねください。その他の方は、自費での薬局購入となりますので、薬局にお問い合わせください。ここは2週間ぐらいでしょうか。
(C) リブレ装着で楽しい食の冒険を2週間。写メとあわせた資料作りもとても楽しい。コンピュータでのデータ作りはとても簡単。でも若いヒトに頼むと良いです。
(D) 自分の食事への介入、やはり半年ぐらいは必要でしょうか?
(E) そして、最後、約7ヶ月後に新しい腸内細菌叢を育てている新しい自分と出会うことになるはずです。
Happy ending が待ってます。
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