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喉を鍛える


主任言語聴覚士  森田 浩

皆さんは喉を大切にしていますか。日中はお喋りを楽しみ、時には歌を披露し、多種多様な味と形状・温度の食物を飲み込み、毎晩刺激的な飲料を嗜み、発がん性の高い煙を吸い、仕事や排泄の際に息み、風邪をひいたといっては咳をして喉を酷使しています。更に、睡眠中は鼾と逆流の脅威に晒されています。

平成23年に肺炎が日本人の死因の第三位になり、近い将来第二位になると予想されています。肺炎の殆どが誤嚥性肺炎であること、誤嚥性肺炎の原因の殆どが不顕性誤嚥(咳を伴わない誤嚥)であることは承知の事実です。では、誤嚥性肺炎になり易い人はというと、年齢では70歳以降、性別では男性に多いことも分かっています。私自身、50歳を過ぎた頃から唾液で咳を伴うようになりました。男性は、解剖学的に加齢と共に喉頭が下がり、嚥下運動の際に挙上する距離が長くなりタイミングのずれを生じることが大きな原因のようです。これからの健康寿命を支える鍵は、不顕性誤嚥(特に睡眠中の)を予防することだと考えます。

では、不顕性誤嚥を予防するための方法を考えてみましょう。一つ目は、喉を鍛えること。最近、週刊誌や健康関連の雑誌、某動画サイトや某通販サイトでは、喉を鍛えることをテーマにした特集や動画・書籍が盛んに紹介されています。例えば、言語聴覚士が行う摂食嚥下リハビリテーションの訓練手技として、舌骨上筋群を鍛える為の開口訓練が「喉E体操」として、食道入口部を開大する為の種々の訓練手技が「嚥下おでこ体操」「喉仏キープ体操」として分かり易く紹介されています。二つ目は、就寝時の姿勢を工夫すること。これからは側臥位、究極は「完全側臥位」で寝ることが、不衛生な唾液の誤嚥を予防してくれるでしょう。三つ目は、口腔ケアを徹底すること。これに糸ようじやフロスを加えれば更に功を奏すると考えます。私は、日頃から喉を酷使するせめてもの手当てとして、年に二回程歯科医院で歯石除去をお願いしています。終わった後は、元気を頂いた気分です。最初の頃は、歯磨きの仕方を指導されましたが、近頃はお褒めの言葉を頂けるようになりました。これからも欠かさず通い続けたいと思います。担当の歯科衛生士には、足を向けて寝られない心持ちです。

不顕性誤嚥の予防に取り組み、益々の健康長寿社会が到来することを願っております。

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