がんは早期発見や治療の進歩により、5年生存率は平均すると60%以上になって半数以上が助かる時代になっています。すなわちがんと共存しながら生きていく期間が、非常に延びています。
以前はがんになるとやせて食べられず、衰弱することが多かったのです。その原因はよくわからなかったのですが、近頃だいぶ解明されてきました。がんからいろいろなホルモン類似物質(サイトカイン)が出て脳に作用すると食欲が低下する、筋肉に作用すると筋肉の分解が起こり筋力低下して疲れる、動けなくなる、体重が減る、ストレスにも弱くなっていろいろなことができなくなるなど、複合的な代謝異常であり、不活動による虚弱です。治療の間もその後も、副作用や痛みで安静になりやすく、体力が落ちてしまいがちです。
がんを経験された方々が治療を継続していくなかで障害が生じたとき、生活面や身体の安全面をサポートしていくということが、非常に重要になってきました。身体の活動性や機能を維持するために、運動療法が奨められます。運動によって生活の質の維持や症状の改善が見込めることが実証されるようになったからです。
肺がんなどが背骨、肋骨、骨盤や大腿骨など太い骨に転移をきたすと、骨折したり脚が麻痺したりで、ベッド上生活を余儀なくされてしまいます。骨転移の治療は痛みをとることはもちろん、自分の力で動いたりやりたいことをやれるよう、日常生活動作を維持していくことを目標にしています。それが有酸素運動と筋トレの組み合わせで、担当医と相談しながら強度の低いレベルから始めていきます。骨折しないようにひねったりねじったりは避ける、重い物は持たない、急に動かない、などにも注意します。
そして忘れてはならないのが栄養不足にならないこと、カロリーとタンパク質をしっかり摂ることです。がんだからといって、あきらめるものではない。身体の活動、栄養についてのサポートを、積極的に受けていただきたいと思います。
|