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嗅覚障害と認知症


耳鼻咽喉科医師  朝日 香織

今回は、嗅覚障害と認知症の関係についてご紹介します。

嗅覚障害とは?
嗅覚(きゅうかく)とは、「におい」の感覚です。においの感じ方が変化したり、においがわからなったり状態を嗅覚障害といいます。

「におい」を感じる仕組み
におい物質→嗅細胞→嗅神経→大脳

最初に「におい」の元になる物質が鼻から吸い込まれ、鼻の奥にある「嗅細胞」にくっつきます。この刺激が電気信号に変換され、「嗅神経」を伝わり、脳内の思考、記憶、感情などを司る様々な部位に伝わり、複雑な情報処理が瞬時に行われた結果、「いい香り」、「くさい」などと感じます。

このにおい情報の伝達、処理回路のどこか一ヶ所でも異常が生じると、嗅覚障害をきたします。例えば鼻水により嗅細胞ににおい物質がつきにくくなる風邪、慢性副鼻腔炎や花粉症などのアレルギー性鼻炎。また、嗅神経嗅神経自体の自体の障害やにおいに関係する大脳の様々な部位が障害される外傷(脳挫傷)、脳卒中、脳腫瘍、そしてアルツハイマー型認知症(以下、AD)などです。

認知症とは?
認知機能とは記憶、判断、計算、推論などの知的機能のことで、この機能が著明に低下した状態を認知症と言います。原因には大きく2つあり、1つはADのように神経細胞自体が病的に変性、消失するもの。もう1つは脳卒中、脳腫瘍など別な病気に伴う脳機能の低下です。

アルツハイマー型認知症(AD)
認知症の原因のうち、日本人に一番多いのがADです。病気の初期に短期記憶(ついさっきの記憶)を司る脳の「海馬」という場所が損傷するため、「物忘れ」が初期症状とされますが、実は海馬の周りの嗅覚に関わる部位に先に損傷が起こり、記憶障害の何年も前から嗅覚障害を生じていることが多いのです。そして多くの方は嗅覚障害を自覚していません。

残念なことに、ADの根本的治療法は存在せず、発症すれば確実に進行します。しかしながら、早期の発見と治療開始により、病気の進行を緩やかにすることが次第に可能となってきています。ADの初期症状かもしれない嗅覚障害を早期に診断することが、認知症の早期治療の鍵となりえるかもしれません。

耳鼻咽喉科では嗅覚障害について、鼻、副鼻腔や、嗅覚に関連した脳の検査を行っています。「最近、においの感じ方が変だなぁ?においが分からないなぁ?」と感じたら、一度、検査を受けてみてはいかがでしょうか?

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