便秘は日常よく遭遇する症状として軽視される傾向がありますが、便秘が長く続く場合は、QOL(生活の質)を大きく低下させる原因となります。女性に多い症状と思われていますが、男女問わずお悩みの方は、多いのではないでしょうか。
厚生労働省が発表している平成28年度国民生活基礎調査によれば、有訴者率は2~5%程度と言われ、男性(2.5%)よりも女性(4.6%)に多い傾向を示しています。加齢により有病率は増加し、若年層では女性に多く、高齢になるに従い男性の比率が増加しています。80歳以上では男女比がほぼ1:1となり、男女ともに10%以上の方が慢性的な症状を自覚しています。
平成29年10月に「慢性便秘症診療ガイドライン」が刊行され、その中で便秘は「本来体外に排泄すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
便秘のタイプには、大腸の蠕動運動が低下し、内容物をスムーズに送り出すことができなくなって起こる「弛緩性便秘」、便が直腸まで送りだされているのに便意が起こらない「直腸性便秘」、大腸が緊張して痙攣性に収縮し、内容物の通過と排便に障害がおこる「痙攣性便秘」があります。最近では、主にストレスが原因で大腸が過敏になり便秘と下痢を繰り返す「過敏性腸症候群(IBS)」も増えてきています。
便秘症治療薬を効果的に使用するためには、便の状態や薬の性質を知って、目的にあった薬を選択することが大切です。治療薬としては、腸を直接刺激して蠕動運動を活発にし排便を促す「大腸刺激性下剤」や、便を軟らかくして排便を促す「浸透圧性下剤」が長年使用されてきました。近年では、小腸や大腸の中の水分を増やし便を軟らかくする作用の薬や、大腸の胆汁濃度を高めて水分を増やし腸の収縮を促す新しい作用機序の薬が使用可能となり、選択肢が広がりました。
便秘症治療薬の中には、使用方法を間違えると便秘を悪化させてしまうものもあります。また、腎臓が悪い方や高齢者、罹病歴の長い糖尿病患者など潜在的に腎機能が低下している方では注意が必要な薬もあります。
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