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オーラルフレイルとは


第2歯科口腔外科部長  松井 宏

加齢に伴って心身の機能は徐々に低下しますが、何も対策を施さなければ次第に虚弱へと傾きながら自立度が低下し始め、要介護状態に陥ってしまいます。日本老年医学会では虚弱(Frailty)のことを「フレイル」と呼び、国家プロジェクトとして全国民に対して予防意識を高める活動が展開され始めています。

フレイル対策の柱の一つは「栄養」です。そして、その栄養を摂取するための身体の入り口は「口」です。つまりフレイル対策には、「歯科口腔機能の維持~向上」が必要不可欠なわけです。そこで歯科界においては、「口(Oral)」と「フレイル(Frailty)」を合わせて「オーラルフレイル」という造語を作り、高齢者の口腔保健活動を推進することとなりました。

オーラルフレイルは、生活範囲の狭まりや精神面の不安定さなど、生活環境や心身の状態の変化から口腔保健への意識が低下し、次に日常生活において出始めた口のささいなトラブル(滑舌低下、噛めない食品の増加、食べこぼし、むせ、口の渇きなど)を放置してしまう事により、さらに口腔機能の低下(咬み合わせる力の低下、舌運動の機能低下など)が生じ、低栄養のリスクが高まり、最終的に食べる機能の障害を引き起こすことになってしまうという、一連の現象および過程と定義されています。

しかし、このオーラルフレイルは各段階で適切な対応を取れば改善が可能なことも研究で示されています。高齢者の方が自ら自分事として考え、“ささいな衰え”から機能低下の悪循環に陥ることを防ぐための対応策を、生活の中に取り入れることが必要です。

当院では、本年4月より「フレイル予防健診」を開始します。その中で当科ではオーラルフレイルに関する健診を担当し、“ささいな衰え”を捉えていこうと考えております。口腔内の状態(歯数、歯周炎の程度)だけでなく、簡単な咀嚼や嚥下能力の測定、口腔乾燥の検査などを準備しております。

オーラルフレイルのサインを見逃さないためにも、是非、健診をお受けください。

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