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母指CM関節症 ~装具療法と生活指導について


主任作業療法士  岩片 淑江

日頃、手の痛みを感じることはありませんか?
今回、臨床でよくみられる母指CM関節症についてお話したいと思います。
 
症状としては、ビンの蓋を開ける時などに母指(親指)の付け根に痛みを生じます。40歳以降に多く発症し、50~70代の女性に多くみられます。
 
母指CM関節は第1中手骨と手首の小さな骨(大菱形骨)間の関節です。「鞍関節(あんかんせつ)」という馬の鞍のような形状をしていて、他の指と向き合ってつまみ動作ができるように大きな可動域を有します。その周りは強靭な関節包靭帯で支持されていますが、繰り返しのストレスにより靭帯機構の弛緩が起こり、それに伴う関節の不安定から関節症が生じると考えられています。
レントゲン検査ではCM関節の隙間が狭く、骨棘(骨のとげ)や亜脱臼が認められることもあります。
治療は、痛みが強く、高度な関節の変形がみられるときには、「手術療法」の適応となりますが、まずは消炎鎮痛剤の内服、外用薬、関節内注射、装具療法などの「保存療法」を行います。

1.装具療法について
痛みの軽減、機能障害の改善を目的として行われます。
装具の選択では、疼痛、変形などの関節症状のほかに年齢、職業、使用場面、装着感などを考慮し、ご本人と相談して決めます。
CM関節症の装具には主に以下の種類と特徴があります。
◆既製の装具
・メッシュ素材 当たりが柔らかい、水仕事には適さない
・シリコン素材 水仕事でも使える、通気性がない
◆患者さんの手に合わせて作製する装具
・スプリント(熱可塑性プラスチック製)
症状に合わせられる、水仕事でも使える、作製時間が必要

2.生活指導
関節の変形は残念ながら元には戻りません。進行を防ぐためにも日常生活のなかで手の負担を軽減することはとても重要です。
関節保護の観点から、関節の運動と休息のバランスを維持する、できるだけ多くの関節でストレスを分散する、より大きく強い関節をなるべく使う、関節を安定した位置で使うことなどが大切になります。

母指CM関節に負担をかけないために
1)重い物は片手ではなく、両手で持ちましょう。
2)蓋の開閉や雑巾しぼりは力を入れ過ぎないようにしましょう。道具(自助具)の使用もお勧めです。
3)母指全体を伸ばすようにしてつかむ動作は避けます。母指を軽く曲げ、きれいな「○」を作るような形で使うことがコツです。

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