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食事摂取基準と病院の食事について


栄養管理室長  富永 実希

日本人が健康を維持するために必要なエネルギーや栄養素の量がどのくらいか、年齢や性別、活動量も考慮して定めた指標が厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」です。5年ごとに改定が行われ、現在は2020年版が使われています。栄養士・管理栄養士向けのガイドラインですが、食品表示の基準に使われたり、保育園や小中学校・施設などの集団給食にも使われたりと、実は私たちの食生活に深く関わっています。

病院においても食事指導や入院時の献立作成の場面で活用しています。今回の改定では高齢化社会を踏まえて、高齢者の低栄養やフレイル予防の対策が盛り込まれました。また、若いうちから生活習慣病予防に対応することがポイントになっています。当院では、フレイル予防の観点からたんぱく質由来のエネルギー量の割合を15%以上に引き上げるようにしました。また、1日のナトリウム(食塩相当量)について、成人男性は8gから7.5g、女性は7gから6.5gと目標が下がったため、少しずつ献立の改良を重ねています。実際には減塩食などは6g未満なので、あまり差が無くなりつつあります。ただし高齢者や普段の塩分摂取量が多い方は、入院によって食欲減退や低ナトリウム血症を起こす可能性があるため、きめ細かな対応を心がけています。

「食事をする」という行為には、エネルギーと35種類の栄養素の補給ということだけでなく、嗜好を満足させたり、食材や料理に季節や文化を感じたりするなどいろいろな役割もあります。現代の食を取り巻く状況は多様化し、大変便利な世の中になってきました。しかしその反面、つい食べ過ぎてしまったり、偏った食事内容になったりと、食生活は乱れがちです。栄養は不足しても過剰になっても体に負担がかかり、そのような食生活を続けると、生活習慣病にもつながります。そこで食事摂取基準を利用して作られている病院の食事は、個々に合わせた食事量やバランス、エネルギーにおいて参考になる点があると思います。病院で食べる食事が、より多くの方の食生活を見直すきっかけになることを望んでいます。

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