ろうさいニュース

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排尿障害と排尿ケアチーム


泌尿器科部長  小池 宏

排泄に関わることは羞恥心を伴うことでもあり、人としての尊厳を保つためには非常に重要な部分だと考えています。できれば、そっとしておいて欲しいし、他人には関わって欲しくないと思っている方が多いはずだと思っています。

当院では整形外科の医師たちが頑張って、たくさんの高齢者の大腿骨骨折などの手術を行っていることや、脳神経外科の青木医師が急性期医療を終えてリハビリテーション期に移った脳血管障害の治療を他院から受け容れていることもあり、「うまく排尿できず、たくさんの残尿がある」、「排尿の回数が多い」、「尿が漏れて困る」などの症状があり、私のところに相談が寄せられます。泌尿器科医としては、患者さんが困っている症状を緩和して、残尿が多いことに起因する腎機能障害や、発熱を伴う尿路感染を起こすことなく日常生活を送ることを目標としています。

2017年10月からは泌尿器科医と皮膚・排泄ケア認定看護師、病棟・外来看護師、病棟薬剤師、リハビリテーション技師、医事課職員のメンバーが集まって、排尿の問題を抱える患者さんを提示して、各々が関わっている部分の状況を報告し合って、カンファレンスを定期的に開いて解決策を模索する活動を行っています。患者さんお一人おひとりで、疾患や困っている症状、認知能力や残存する身体機能、リハビリテーションの進み具合、さらには退院に向けての到達目標も異なります。家族背景や社会環境もそれぞれで違い、なかなか簡単には解決するのが難しく、時間の掛かることが多いと思っています。

まずは排尿直後に出し切れずに膀胱に残ってしまう残尿の有無と量が、治療を進めて行く上での一つの指標となります。例えば手術直後であり十分に離床が進まない状態で、ベッド上で横になったままでは普通は上手く排尿できません。身体機能が正常な若い人でも、簡単なことではありません。高齢者では以前から気付かれなかったものの、排尿障害を抱えていたことも多いと思われますし、さらに困難だと考えています。排尿障害を改善させて症状の緩和を目指すためには、まずは身体のリハビリテーションを進めて早期の離床を促して、トイレで排尿できるようにすることが大事です。

次に、ある一定の期間では間欠導尿も重要です。空気を吹き込んで膨らませたゴム風船は、膨らませたすぐ後で口を開けると、勢いよく空気が押し出されてきます。しかし、かなり時間が経った後は、口を開けても勢いよく空気は出てきません。膀胱も同じで長期に渡って尿が充満している状態が続くと、膀胱が麻痺して伸び切ってしまい、収縮力が落ちて尿を上手く排出できなくなります。そのためには受動的ですが、時間を決めて管を尿道から膀胱に挿入して、溜まっている尿を出して膀胱の伸び縮みする動きを回復させるためのリハビリテーションが必要になります。投薬を行いながら、残尿量や症状の推移を観察することになります。

排尿ケアチームでは今後も、患者さんのご家族やケアマネージャーとも連携して、お一人おひとりにとって最適な排尿管理を模索し続けます。皆さま方のご理解とご協力を、よろしく、お願い申し上げます。

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