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しっかり咬めなかったら、インプラントを選択肢に


第3歯科口腔外科部長  武藤 祐一

最近のビッグデータを活用した研究で65歳以上の健常者を対象に咬み合わせと認知症の関連を検索した4年間の追跡調査があります。結果は20歯以上ある方を基準に歯がほとんどなく、義歯未使用の方は1.85倍、また何でも咬める方を基準にして、あまり咬めない方は1.25倍認知症の発症リスクが高いことがわかりました。ただし歯がほとんどなくとも、義歯を使ってしっかり咬める方は認知症の発症リスクは20歯以上の方とほとんど変わりないとの結果でした。また別の研究では奥歯でしっかり咬めることが転倒防止につながると報告されています。

このしっかりというところがミソでして、特に下顎は顎堤(義歯を載せる土台の骨)が強く吸収し、萎縮してる場合が多く(写真左2枚)、通常の総義歯では咀嚼時の動きが大きいため、安定した咬み合わせが得られないことが多く、患者さんの満足度はかなり低いと報告されています。

当科ではこのような場合、下顎に2本のインプラントを植えています。術後3ヶ月くらいでインプラントに雄ねじ、義歯に雌ねじを入れて、義歯を新しくします。義歯をつけるときにはカチッという感じで入り、安定した状態で外れることなく、しっかり咬めるようになります。写真は術後下顎インプラントと義歯の内面を示します。



通常の義歯では安定が望めないような平らな顎堤にインプラントを用いた場合、95%の患者さんで満足が得られ、咀嚼能率は通常の義歯よりはるかに良好になり、しっかりと咬めると報告されています。インプラントの成功率も5年以上の経過観察で94.5~100%であり、良好な成績が得られています。清掃も雄ねじと義歯を綺麗にしていただければよいので比較的簡単であり、介護が必要になった場合も維持は容易です。

上顎も同様に義歯が落ちてしまう、違和感が強いという方には4本のインプラントを植えて対応しております。写真右は義歯内面を示しますが、義歯のまんなかをくり抜いても充分維持力があるので、違和感は格段に小さくなります。

手術が怖いとおっしゃる方が多いと思いますが、当科では局所麻酔に静脈麻酔を併用しておりますので、寝ているうちに手術は終わってしまいます。料金は自費治療になりますので、義歯制作を含め、下顎では全部で60万円、上顎では110万円くらいかかりますが、維持費は少なく、長期的に安定してお使いいただけます。ご希望があれば当科にお気軽に受診していただければと存じます。

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