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生活の中の放射線…放射線は怖いもの?


中央放射線部長  佐藤 努

“放射線という言葉で思い浮かぶことは?”

今の社会では、原発事故による汚染、核ミサイルの脅威など、環境を破壊し平和や生活を脅かすといった悪いイメージばかりを思い浮かべてしまうことが多いかもしれません。

私たちは、日常の生活の中でも常に放射線(自然放射線:日本では平均2.1ミリシーベルト)を受けています。宇宙からやってくる宇宙線や、大地には岩石に含まれるウラン・ラジウム、食べ物の中にも微量のカリウム40(野菜や肉・魚)が含まれています。

放射線は、使い方によって大きなメリット(利益)が得られます。私たちの生活の中で大きな役割を果たしていることも事実です。農業分野では作物の品種改良や害虫の駆除、工業分野では製品の厚さ測定や非破壊検査(壊さないで内部構造を見る)、ゴムやプラスチックの品質改良などにも利用されています。地球温暖化を懸念する一部の国では、温室効果ガス排出の少ない原子力発電は、クリーンエネルギーとされる考え方もあります。(漏洩事故や廃棄問題等の対応が十分に考慮されたうえで)

その中でも、私たちにとって一番身近で大きな利益になることは、“医療分野での活用”です。放射線検査(レントゲン検査)では“病気やケガの発見と評価”により適切な治療を受けることが可能になります。放射線治療では手術をすることなく悪性腫瘍などをなくす(小さくする)ことができます。

このように、様々な性質や利用価値のある“放射線”ですが、今後、どの分野においても、より安全で有益な放射線利用をおこなっていくために、大変重要な条件があります。

・・《人によるコントロール(制御)が可能であること》・・

先の、福島第一原子力発電所の事故は、地震により施設が崩壊したことで、中にある放射性核物質の制御ができなくなったことが原因となります。今も懸命に除染作業や再発防止対策が行われています。

結果を受け、政府は原子力発電や放射線を扱う作業(工場・販売所・流通施設等)に関連した法律(原子力基本法)をより厳しくしました。

医療分野でも同様に、関連する法律(医療法)が厳しくなりました。令和2年4月、患者さんの医療被ばくに関連する “放射線の安全利用に係る法律”が施行されました。放射線を取扱う全ての施設(病院)は、法律に則った適正な放射線管理(制御をするための)を実践することが義務化されました。

当院でも、①法律で許可された放射線装置を使用 ②安全確保のための放射線装置の定期点検(毎日の点検)の実施 ③法律で定められた職員研修の実施 ④診断に必要な最低限の放射線量での撮影、が日常的に実践されています。

今後も、“より安心で安全な放射線診療の提供”をスタッフ一丸となって取組んで参ります。

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