ろうさいニュース

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第2号掲載(2002年9月)

腰が痛いということ
新潟労災病院副院長・勤労者脊椎腰痛センター長 今井久一

 「腰痛」については、成人の約8割の方が経験しているといわれるほど、ポピュラーな疾患であります。また、腰痛は人類が二本足で立ち上がったときからの宿命であるとも言われています。この宿命によるといわれる腰痛は、明らかなエビデンス(証拠)はありませんが、人の背骨(脊柱)を側面から見たときの微妙なカーブが、肩凝りや腰痛にかなりの影響を与えていることは事実のようです。

 そこで、姿勢と腰痛との関連性についてですが、起立位で側面からみた腰椎の前弯のカーブを観察します。この弯曲が強すぎても、またストレートでも、腰の筋肉にかかる負担は大きくなり、腰痛の原因となります。正しい姿勢を保つには日頃からの注意が必要ですが、これにはウオーキングなどの運動や、とくに腹筋や背筋の筋力を強化する無理のないエクササイズの継続が望まれます。職場における就業前・就業中での体操や、「腰痛体操」を推奨します。

腰の椎間板にかかる圧力を測定した研究があります。仰向けで寝たときの椎間板内圧を1とすると、立位では4倍、おじぎ姿勢(中腰)や腰掛けの姿勢では約6倍の圧力がかかります。体重60sの人では立っているだけで、100s以上の圧力が腰にかかることになります。このことは、肥満と腰痛との関連を示していますが、肥満→腹が出ること→腰椎の前弯の増強という悪い循環ともなります。

労働と腰痛の発現については、とくに腰痛発生頻度の高い職場として以下の5職種があげられ、作業態様別の対策が示されています。その職種は、@重量物取り扱い作業 A重症心身障害児施設等における介護作業 B腰部に過度の負担のかかる立ち作業 C腰部に過度の負担のかかる腰掛け作業・座作業 D長時間の車両運転等の作業などです。
これらの職種における腰痛の高い発現は、先に述べた腰部に負担のかかる姿勢・作業姿勢からも容易に推察されるところです。

ここで、腰痛の原因となりやすい二つの疾患をお話しします。

その一つはいわゆる「腰痛症」です。これは腰の筋肉の慢性的な疲労というべき状態で、日常の生活や仕事はできるけれども、いつもあるいは頻繁に腰が痛む。とくに夕方になると痛みが強くなるというものです。腰のレントゲン写真では特別な異常がなく、いわゆる慢性の腰痛と診断されます。日常の姿勢や作業姿勢・生活習慣や体形などに問題のあることが多く、その治療には腰痛に対する知識や解決にむけての自己努力も必要です。このような方には当院リハビリでの「腰痛教室」をお勧めします。

もうひとつは「腰椎椎間板ヘルニア」です。椎体と椎体の間にある椎間板はクッションの役割をして重圧に耐えていますが、この機構が破綻して後方へ飛び出したのが椎間板ヘルニアです。これが神経を圧迫して足まで走るような痛み=坐骨神経痛となります。中腰で重量物を持ち上げたときなどに起きますが、ちょっとした動作、例えばクシャミをしただけで起きることもあります。お尻から足先まで走るような痛みやしびれのある時には、椎間板ヘルニアを疑う必要があります。当院ではこのような脊椎疾患の診断にとても有力で高性能なMRI(磁気共鳴装置)が完備していますので、速やかに診断でき、治療方針を決定できます。

このほかにも、腰痛をきたす疾患はさまざまです。整形外科外来では、毎日腰痛診察をいたしておりますが、「腰痛」に関連した特別の悩みのある方、あるいは職場での腰痛対策に務めておられる方からの相談などは、「脊椎・腰痛センター」にて受け付けております。お気軽にご連絡ください。

「腰痛教室」への問い合わせ   (内線)1550
「勤労者脊椎・腰痛センター」への相談 (内線)1230

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