(ろうさいニュース第4号掲載)
呼吸困難について
新潟労災病院・内科部長 森山裕之
本来なら、痛みシリーズの胸痛ですが、呼吸の痛みともいうべき呼吸困難を今回取り上げます。
呼吸器内科として、最も重要な症状のひとつに、呼吸困難があります。
これは、息切れ、息苦しさなど呼吸に伴う不快な感覚の総称と考えられています。
呼吸困難のメカニズムは、かなり複雑ですので簡略化しますと、出力系としての、脳幹にある呼吸中枢と、大脳皮質からの信号と、様々な受容器からの信号、低酸素、高二酸化炭素などのミスマッチによって発生すると考えられます。
大脳皮質が10吸うつもりで、8しか吸えなかったとき、呼吸困難が生じます。
したがって、単に低酸素血症だけでは呼吸困難は説明できないとされています。
登山で5000メートルから6000メートルまで登ると、低酸素血症を呈しますが(30Torr位
まで下がるそうです)、呼吸困難はほとんど感じられないとのことです。
彼らは、hypoxic drive により過換気をしているのですが、それ自体も呼吸困難にならないそうです。むしろ、過換気がなくて、低酸素血症も感じられないとするなら、呼吸困難がないことは、生命維持には危険な状態と考えられます。
また、慢性の喘息患者さんでは、空気がスムーズに入らないことが当たり前に感じられるようになり、致死的な発作になるまで治療を受けに来ない人もいます。こういう人は、教育入院のかたちでピークフローをみながら、充分なステロイドなどにより、本人の最適な状態を理解させることも重要です。
呼吸困難の評価法は、重要ながら困難でもあります。一般的には、Hugh−JonesのHJ分類が用いられる場合が多いのですが、患者さんの主観的表現であり、効果判定などに用いるには、
おおまかすぎて不向きです。
簡単には、Tが呼吸苦なし、Vがゆっくり平地なら歩ける。Xが安静時でも呼吸苦ありと覚えてください。
当院では、呼吸器リハビリの一部として、6分間歩行などを取り入れつつ評価しています。
今後は、QOL評価も含め、包括的呼吸リハビリを行っていく予定ですので、短期入院など気軽に連絡してください