(ろうさいニュース第6号掲載)
変形性股関節症について
新潟労災病院整形外科部長 岡部聡
変形性関節症とは関節が老化やケガなどの原因で進行性に変形する疾患です。すべて
の関節におこりますが、体重を支える関節である膝、股関節におこると歩行が困難にな
り日常生活に支障がでてきます。発生頻度は圧倒的に膝関節ですが、手術的治療が必要
となる例は股関節のほうが多いようです。
股関節は股の付け根の関節で、骨盤と大腿をつないでいます。ボール&ソケット関節
といわれ、お茶碗の様な形の骨盤側の受け皿と、それに対して球形の大腿骨頭がお互い
に吸い付くようにぴったりとはまっています。大腿骨頭の大きさは直径が約4〜5cm
です。体重を支え、いろいろな方向に動く関節で、片足立ちや、歩行中の時でも体重の2.5
〜3倍の重量がかかり、走っているときは体重の約4倍にも達します。
原因は日本ではほとんどが関節に構造上の欠陥があるために発症し、約80〜90%を
占めます。骨盤(受け皿)の形が悪く骨頭を十分覆うことができないため、体重を支え
る範囲が狭くなり負担が集中し、その部位の軟骨が徐々にすり減り、最後には骨まで壊
れてしまいます。女性に多く発症し、男性の約6〜7倍といわれています。また両側性
に認められることが多いことも特徴で、約50%の人は両側性です。
症状は痛み、歩き方がおかしい(跛行)、関節動きが悪くなる、の三つです。
痛みは運動時痛で始まることが多く、とくに立ち上がるときや、歩き始めなど運動の開
始時期に痛みがでてきますが、初期では動かしていると痛みが軽快します。痛みが強く
なると跛行が認められ、変形が進んでくると軟骨や骨が壊れてくるので2〜3cmも足
が短くなることもあります。また股関節の動きが悪くなり、爪を切ったり靴下をはくこ
とが困難になっている時にはかなり進行していると考えられます。初期のうちは痛みが
あっても直ぐに軽快してしまうので、ある程度進行した状態で病院を受診することが多
くなります。
この疾患は、程度の差はありますが徐々に進行していくので、股関節に負担をかけな
いようにすることが治療法の基本になります。まず日常生活では1)肥満を防止する。
2)生活を洋式にする。3)できれば自転車を使用する。4)なるべく杖をつく。など
です。杖を付くことによって股関節の負担は約1/3〜1/4に減少するのでかなり効果が
あります。痛みが強いときには痛み止めや筋肉を和らげる薬を使います。また温めたり
運動療法も効果がありますが、運動量は終了時に痛みがあるかないか、翌日まで疲労が
残らない程度が目安でしょう。
手術的治療は、自分の骨で直す場合と人工の関節を使う場合の2つに分かれます。年
齢、進行の程度、片側か両側なのか、また女性が多いので家庭の事情などで変わってい
きます。特に若年者で両側の場合には長期的な治療計画が必要です
日本人の場合、原因はほとんどが関節の形が悪いためで、多くの方は若いうちから軽
い痛みを感じています。特に幼児期に股関節の脱臼があった人や、気になることがある
人は早めに整形外科を受診してください。