(ろうさいニュース第10号掲載)
「痔」(肛門出血)の話
新潟労災病院 外科部長 小野一之
「痔」と言ってもいろいろな種類があり、大きく分けて (1)内痔核(いぼ痔) (2)外痔核 (3)裂肛(切れ痔) (4)肛門周囲膿瘍(膿がたまる)などがあります。
(2)の外痔核は肛門の外にできた‘血まめ’で、しこりが触れ、かなり痛いのですが、血まめをとるだけで、すぐによくなります(基本的に入院せず処置できます)。
(3)の裂肛は、硬い便などにより肛門が裂けたもので排便時に痛みを伴います。ほとんどは、自然に良くなったり、薬で良くなりますが、何度も繰り返していると、瘢痕となってしまい、なかなか治らず、手術をした方がよいときもあります。
(4)肛門周囲膿瘍は、肛門の近くに膿がたまってしまう病気で、痛みを伴い、高熱がでることもあります。ほとんどの場合、膿をだす処置が必要で、入院して処置を行うこともしばしばあります。
さて、一番多いのが(1)の内痔核で、軽いものを含めるとかなりの方が患っています。ひどいものは、痔が腫れあがり、お尻から飛び出したりしてかなりの痛みがあるとか、出血がひどく貧血になる人も稀におります。多くの人の症状は排便時にたまに出血する、排便時にできものが飛び出し、指で戻すとすぐ戻る、肛門にものがはさまっているような残便感がある、などです。ただ基本的に痔は悪性の病気ではないので、本人が困らなければ、特に治療の必要はありません。治療も、まずは肛門の差し薬から始め、出血のひどいものには、注射などしたり、輪ゴムで縛ったりする方法があります。しかし、内痔核自体は薬では完全に治りません。薬での治療は、炎症で腫れあがった痔をひどくなる前の状態に戻し、症状を抑えることが目的です。また薬をつけているからといって予防になるわけもありません。根本的に痔を治すには手術が必要ですが、前に述べたように痔は悪性の病気でないので本人がどの程度で困っているかで治療方法を決める病気です。最近は新しい手術機械を使った手術方法も開発され、手術後の痛みもかなり少なくなり、手術後数日で退院する事も可能となっています。
あと出血がよくある方は、痔でなく、直腸のポリープや癌のこともあり一度診察を受けることも大切です。以前から軽度の排便後の出血があり、痔の出血と考えていたら、実は大腸癌があった、などとの事例もありますので、必要に応じて大腸の検査をしておくことも大切です。まずは気軽に相談して下さい。