ろうさいニュース

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(ろうさいニュース第11号掲載)

最近注目されている癌・・・前立腺癌
新潟労災病院 泌尿器科部長 小池 宏

 最近我が国でも注目されてきている癌が男性にみられる前立腺癌で、泌尿器科で取り扱います。その発生原因はまだ不明と言わざるを得ませんが、発生頻度が高くなりつつあり、発見・診断されることも多くなっていることは確かなようです。前立腺という臓器は一般にはあまりなじみのない臓器です。男性のみに存在し、膀胱のすぐ出口で尿道を取り囲んでいます。正常であれば栗の実くらいの大きさです。このため、体表から観察できるものではありませんが、肛門から指で触知することは可能です。前立腺は精液の成分である前立腺液を作ったり、男性ホルモンの代謝に関係していますが、その他の働きは現在でもよく分かっていません。
 前立腺疾患では、その存在部位ゆえにさまざまな症状を引き起こします。排尿困難や残尿感・夜間頻尿などがその代表的なものですが、これらの症状が癌特有の症状かといえば、そうとは限りません。前立腺疾患には、前立腺癌・良性の前立腺肥大症・前立腺炎などが挙げられますが、その鑑別にはかなりの困難を伴います。
 最近目にすることが多くなったものに、PSA(前立腺特異抗原)という検査法があります。人間ドックや住民検診に組み込まれることも多くなってきているようですが、これは血液検査で前立腺癌の疑いがないかを調べる方法です。このPSA値がある一定の基準値を越えると前立腺癌の疑いがあると判定するものです。また、このPSA値は前立腺癌と診断されて治療が始まったときに、その治療効果を判断する材料の一つにもなります。前立腺癌の発生は、50歳未満でも発生例がないわけではありませんが、一般的には50歳以降と考えられています。前立腺癌の初期も普通はまったく無症状に経過しま
す。もしも前立腺癌が心配ということであれば、定期的にPSAを測定したほうがいいようです。
 PSA値が基準値を越えていた場合でも、極端な高値である場合を除いて、これだけで癌と診断できるわけではありません。また、肛門からの前立腺触診所見や尿道膀胱鏡所見などから前立腺癌を疑った場合でも、確定診断のためには前立腺針生検を行って病理組織学的に癌と診断することが欠かせません。この前立腺針生検というのは、経直腸的に前立腺を穿刺して数箇所から前立腺組織を採取して癌組織の有無を調べる方法です。採取した前立腺組織の中に癌組織が含まれていれば、これで前立腺癌と診断されます。しかし、癌組織が含まれていなくても、癌ではないと否定できるものではありません。僅か数箇所のみから前立腺組織を採取して行う検査のため、この検査には限界があります。このために、癌を疑って繰り返してこの検査を行うこともあります。
 前立腺針生検を、当科では安全面を考慮して入院の上、手術に準じて手術室で腰椎麻酔下で行っています。常在菌のいる肛門直腸から行う検査であるために全身の感染症を起こしたり、穿刺部からの出血をきたしたり、腰椎麻酔の影響や穿刺した前立腺局所の炎症のために排尿困難を引き起こしたりと、いろいろな危険性を伴う検査法といえます。入院期間は5日間程度で、検査結果が出るまでには7〜10日間程度が必要です。検査結果は退院後、次回の外来受診時にお話しすることになります。また、癌と判定された生検結果ですぐに治療法が決定されるわけではありません。引き続いて行われるCTなどの検査結果を踏まえて、患者さんと相談しながら治療を進めていくことになります。

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