ろうさいニュース

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(ろうさいニュース第12号掲載)

人工歯根(デンタルインプラント)について
新潟労災病院 歯科口腔外科部長 武藤 祐一

 高齢者人口の増加にともない、重症歯周病(歯槽膿漏)の患者さんは推定3700万人いるといわれています。歯周病を治す決定的な治療法はなく、現在の歯科医療は歯は抜けてしまうものとして、医療が積み重ねられてきました。そしてその抜けてしまった歯を回復するのが人工歯根治療です。
 通常、虫歯、歯周病で無くなった歯の部分は入れ歯、ブリッジ(両側の歯を削って橋渡しをする)でかみ合わせを回復しますが、力の負担を十分に考慮しないと、残っている歯に過大な負担を強いることになり、更なる歯の喪失を生じてしまうのが一般です。また入れ歯は歯肉を介して、かみ合わせの力を骨に負担させるため、かみ合わせの力は総義歯の場合1/3程度に減少してしまいます。
 ここで1960年代に画期的toolとして人工歯根治療が始まりました。現代人工歯根治療は純チタンもしくはチタン合金でできており、下の写真に示す様に、歯根部分を顎骨に植え込み、3-6カ月後に人工歯根と骨の間の骨性結合が得られた後、人工歯根を土台歯とする歯の部分をいれ、歯の替わりをさせる治療法です。適応は1本からすべての歯の欠損まで用いることが可能です。 


↑人工歯根のレントゲン写真↑

 入れ歯とは違い、骨と人工歯根が結合しているので、しっかりものを咬めるようになりますし、他の歯にも影響を与えることはありません。現在、専門施設での統計では10年後で95%の人工歯根が良好に昨日していること報告されており、人工歯根の表面性状も時々刻々改良されており、さらに良好な結果が発表されています。
 また人工歯根は顎骨内に埋め込むわけですから、初期にはしっかりとした骨がなければ適応出来ないとされていました。しかしこの問題も1980年代から始まった歯周組織の再生治療を応用して骨を再生したり、骨を移植することにより現在大多数の患者さんに適応することが可能になりました。
 ここまでよいことばかり書いてきましたが、やはり適応出来ない場合もあり、歯ぎしりが強い患者さんではインプラントに強大な力がかかるため、適応は困難であり、ヘビースモーカーも歯槽膿漏をおこしやすいため、かなり口の中をきれいに出来る患者さんのみ、適応が可能です。またチタンといえども異物であり、実際の歯と比べると歯根膜(歯のクッション)がないこともあり、歯周病菌には抵抗性が少なく、長期的に使用するにはしっかりとした歯磨きができることが必須の条件となります。
 当科では近年、年間100本程度の人工歯根治療を行っております。
 手術が怖いとお思いの患者さんも多いと思いますが、当科では歯科麻酔認定医が静脈内鎮静法といって、注射で薬をいれて、ほとんど寝た状態となる麻酔方法を用いている間に手術は進められ、術後も手術の記憶はほとんどないため安心して受けていただけます。
 本治療は先進治療であるため自費治療となりますが、義歯の違和感が強くどうしても使用できない、義歯が安定せずかめないなどのご不満がある患者さんにとって現在最適と考えられますので、気軽に御相談ください。

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