(ろうさいニュース第18号掲載)
子供のインフルエンザ
新潟労災病院 小児科副部長 小野塚 淳哉
この号が出る頃にはインフルエンザが流行っていると思われます。そこで今回は子供のインフルエンザについてお話したいと思います。
(1)症状:インフルエンザは突然の高熱で発症し、咳・鼻水に加えて倦怠感などの全身症状が強いのが特徴です。子供では大人に比べて発熱の程度が高く、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状を伴うことも多いです。初診時には発熱以外の症状がない場合もあります。
(2)合併症:呼吸器合併症として中耳炎、肺炎、気管支炎、気管支喘息発作などがありますが、抗インフルエンザ薬を早期に用いるようになりその頻度は減っています。その他、子供に多い合併症として、熱性痙攣があります。比較的高年齢の子供(小学生など)にも起きることが多いようです。またインフルエンザ脳症もあります(後述)。また、筋炎(筋肉が炎症を起こす)も子供に比較的多い合併症です。特に学童に多く、主に発症後3〜6日目ぐらいのいわゆる回復期に足の痛みを訴え、歩行が困難になる場合があります。安静のみで自然によくなります。
(3)診断:今はキットですばやく診断することができます(迅速診断)。ただし、発症後まもなくは、まだウイルスの量が少ないために陰性になりやすいようです。結局、流行状況と症状などから総合的に判断することになります。
(4)治療:基本は対症療法(症状に対する治療)です。すなわち水分の補給と安静です。食欲が落ちている場合が多いので食事は無理にとらせる必要はありません。水分は本人がとりやすいもの(アイスやジュースなどでもいいです。病気のときぐらい、本人の好きなものをあげましょう)を与えてください。口から十分な水分補給ができない場合は点滴をする事になりますし、場合によっては入院が必要になります。逆に高熱でも、しっかり水分補給ができていれば入院する必要はないと思います。解熱剤をむやみに使うのは問題ですが、現実には使用せざるを得ない場合が多いです。ぐったりしている、眠れない、辛そうなどの場合は使ってあげてください。ただし、アスピリン、スルピリン(商品名・PL等に含まれる)、ジクロフェナクナトリウム(商品名・ボルタレンなど)、メフェナム酸(商品名・ポンタールなど)は絶対に使ってはいけません!脳症などの重症な合併症と関連があるといわれています。子供にはアセトアミノフェン(商品名・カロナール、アンヒバなど)を用います。解熱剤を処方してもらう場合は医師に確認して下さい。今は対症療法に加えて、各種の抗インフルエンザ薬があります。発熱後48時間以内に飲みはじめることで、発熱期間が1〜2日短くなることが期待できます。しかし、効果が現れるまでは時間がかかることがあり、その間は発熱などの症状に悩まされますので、結局は対症療法が大切ということになります。抗生剤については、抗インフルエンザ薬の登場により細菌による合併症が減ったこと、二次感染の予防効果が不確かであることなどから、最初から服用する必要はほとんどありません。
(5)インフルエンザ脳症について:インフルエンザ脳症は5歳以下(特に1〜3歳)の子供に多く、急激な経過をたどり、死亡率も高い重症な合併症です。治療法も色々試みられていますがまだまだ確立してはいません。また早く抗インフルエンザ薬を飲み始めたら予防できるというものでもないようです(データがありません。亡くなった患者さんの中に、抗インフルエンザ薬を1〜2回飲んだ方もいらっしゃいます)。最初の症状として痙攣、異常行動が多くみられます。何かおかしい、いつもと様子が違うなどの際は早めに受診するようにしてください。インフルエンザ脳症を予防する1番の方法は「インフルエンザにかからない」ことです。そのためには予防接種を受けること、うがいや手洗いをしっかりすること、マスクをすることなどが重要です。今シーズンは、今からでは予防接種は間に合わない可能性が高いので、来シーズンは、大人も子供もしっかり受けましょう。