(ろうさいニュース第21号掲載)
成長期の膝痛−Osgood-Schlatter病(オスグッド病)
新潟労災病院 スポーツ整形外科部長 田西 信睦
成長期に膝痛を生じる病気の一つにオスグッド病があります。オスグッド病は小学校高学年から中学校の年代のスポーツ選手によくみられます。
原因は成長期の使いすぎによる骨端症(炎)と考えられています。成長期は急速な骨の成長がみられ、一年間に8cmも身長が伸びることもあり、骨の成長に筋腱の成長が追いつかないアンバランスな時期にあります。膝では急激な下肢の成長に伴って大腿四頭筋が緊張します。成長期の脛骨粗面(けいこつそめん=膝のおさらの下で、すねの骨が少し盛り上がっているところ)は骨端軟骨(こったんなんこつ=軟骨が骨になっている途中であるところ)で力学的にまだ未熟です。この時期に激しいスポーツをやると脛骨粗面が大腿四頭筋に繰り返し強く引っ張られて炎症や骨端軟骨の一部(骨端核)の剥離が起こり、痛みや盛り上がりが生じます。剥離した骨端核の骨化がうまくいかずに遊離した骨片になると痛みが遺残します。
症状は運動で増悪する脛骨粗面部の痛みと腫れです。レントゲンでは脛骨粗面部の骨端軟骨に異常(不正な骨端核、分節化、骨化など)が認められます。
この病気は早期発見、早期治療が重要です。痛みが著明になり、レントゲンで異常が出る頃はすでに病気が進行した時期です。どんな病気にも言えますが、進行した病気は治りにくくなります。病気の初期に治療を開始する事が大事です。病気の初期には痛みはあまり強くありませんが、運動後の違和感、腫れ、熱感などを自覚します。初期でも脛骨粗面部に明らかな圧痛はあります。スポーツを熱心にしている子供がこのような症状を訴えたら早めに整形外科を受診することを勧めます。病気の初期でレントゲンではわからない異常も今はMRIで評価することが可能です。
治療は保存療法が基本になります。その内容はスポーツの制限あるいは休止とストレッチングです。ランニング、ジャンプを症状に応じて3−6か月制限あるいは禁止します。そして大腿四頭筋のストレッチングを行います。(毎日朝夕2回はしっかりやります。)このほか運動後の局所の冷却や症状にあわせて消炎剤やバンドを使用することもあります。使いすぎが原因なので、ある一定期間脛骨粗面に刺激を与えないようにすればほぼ治ります。しかし、病気が進行して遊離骨片ができてしまい、成長期が過ぎても頑固に強い痛みが持続したり再発を繰り返す場合は、時に手術で骨片を摘出しなければならないときもあります。
病気が進行する前に親や監督者が症状に気づいてやり、早く適切な処置をしてやることが短期に遺残症なく治す秘訣です。ストレッチングは病気の予防にも効果があります。
成長期のスポーツ活動では十分なストレッチングを行うことと個々の成長速度に見合った運動量でやることが病気やケガを予防するのに重要です。