(ろうさいニュース第24号掲載)
病院で良い治療を受ける方法について
新潟労災病院 呼吸器外科医師 能勢 直弘
【治療方針を決めるのは誰?】
以前、早く癌の治療をしなくてはならない患者さんがいました。その患者さんはどうしても仕事が休めないとの理由で、「仕事が落ち着くまで治療は待って欲しい」とおっしゃいました。癌が大きくなって食道を圧迫しかけていたので「仕事と命とどっちが大事なのですか!早く手術をしないとご飯が食べられなくなりますよ!」と早く手術を受けることを強く勧めましたが、「いま仕事を休むと私どころか私の家族も路頭に迷って、ご飯がたべられなくなります。」と断られました。私はそれ以上何も言えず、結局患者さんの仕事が一段落した数ヶ月後に手術は行われました。
この患者さんは医師の私でなく、患者さん自身の決めた方針により手術を数ヵ月後に延ばしたわけですが、「早く手術をしないと命にかかわる」という私の予想は見事にはずれ、現在も元気に生活しておられます。