ろうさいニュース

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(ろうさいニュース第29号掲載)

白内障(しろそこひ)について

新潟労災病院 眼科医師 原田 行規

 カメラでいうレンズの部分が白く濁ってくるのが白内障です。原因はほとんどが老化現象です。他の原因としては、外傷の既往、糖尿病、ステロイド薬使用、眼の炎症などのある人は通常より早く起こるようです。白内障の起こり方は、人によってさまざまでいろいろなタイプがあり、真ん中が硬くなるタイプや、すりガラスのように濁ってくるタイプ、後ろの膜が濁ってくるタイプなどがあります。

 症状はいろいろで、視力が落ちるだけでなく、「近視が以前より進んだ」、「裸眼視力が落ちた」、「ものが二重に見える」、「かすみがかって見える」、「眼鏡を作り直してもみえづらい」などの他さまざまな見え方を起こします。一度水晶体の混濁を起こすと、その濁りは薬では消すことができず、見えにくければ手術を行います。(具体的には濁りを取り除きます。)また進行しにくいように目薬をつけることもします。(ただし薬で老化は完全には止められません。)
 手術は早すぎず、遅すぎずが、理想といえます。以前は全く見えなくなってから手術した方が良いといわれていたようですが、手術方法が進歩して現在ではより小さな傷口で手術ができるようになりました。進行してしまうと小さな傷口からでは手術ができなくなります。手術では、人工レンズを移植しますから、調節力のない眼(完全な老視)になりますので、あまり早く手術するのも好ましくありません。
 水晶体は一枚膜を持っていて、この膜で包まれています。この膜は白内障が非常に進行した人でも無色透明です。白内障の濁りは膜ではなく中身の濁りです。手術では前の膜を円形にくりぬいて(ちょうどやかんのふたを取ったように)、その穴から中身を取り出します。このとき白内障の濁りは硬くなっていますから、これに対して、超音波を使用して濁りをくだいて、小さくして吸引をかけて吸い出してしまいます。濁りがとれればあとは人工の眼内レンズを移植します。人工レンズは、今度はやかんの器のほうに入れます。

 水晶体は眼の中で、ハンモックのようにつるされていて仰向けになっても落ちないようになっています。(中にはもともとこのハンモックのひもが弱い人は、自然に水晶体が眼の中に落下してしまう人もいます。このひもはチン氏帯といいます。)水晶体の支えが弱い人では、濁りはとれたが人工レンズの支えが十分でない人がいます。(支えの弱い人は手術中に支えを補強する特殊な材料を使用することがあります。)当院ではこういった、チン氏帯脆弱例に対し、水晶体嚢拡張リングを用いています。また水晶体動揺の著しい症例に対しては毛様溝逢着フック付き水晶体嚢拡張リングも使用しています。
 また最近、「白内障は簡単だ」という言葉をよく耳にしますが、一般的に時間が短くなっただけであって、簡単な手術ではないことを皆さんによく理解していただけると幸いです。
 同じ白内障でも手術の難易度に大きな開きがあることも確かです。担当する医師に、あなたの白内障は「瞳孔の開きが悪い」、「術中水晶体がぐらぐらするかもしれない」、「ひどく進んだ白内障です」など言われた場合、要注意だと思います。自分の白内障はどの程度なのかということを医師に十分聞いた上で、手術を受けられることをおすすめいたします。 

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