医療の進歩により、以前より癌に対する恐怖のイメージは薄れたとはいえ、現在でも日本人の約三分の一が癌で亡くなっています。まだ現在の医療では、発見した状態が早期癌であるか進行癌であるかで予後が大きく変わるという現状であります。日本人の癌の約60%は消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌等)であり、消化器外科医の自分としては、消化器癌の早期発見の必要性を日々痛感しています。そこで、自分なりに消化器癌の検診について考えてみました。
a.胃癌
市町村等や会社などの健康診断で胃透視を行っている方は多いと思います。統計によれ
ば、受検者の10数%が要精検とされ、その1%前後に胃癌が発見されるそうです。男女合 わせた胃集検の胃癌発見率は0.14〜0.16%とのことです。
これに対し、最初から胃内視鏡(胃カメラ)を行った場合の胃癌発見率は、胃透視と比べ て格段に高く、約8倍の精度があったとの報告もあります。
自分の感想としては、胃透視のみで早期胃癌を発見するのは難しく(進行癌ならばそう ではないでしょうが)、やはり胃内視鏡を組み合わせていくのが必要だと思います。
今まで胃透視の検査のみで一度も胃内視鏡を行った事が無いという方は、是非一度胃内 視鏡検査をする事をおすすめします。
b.大腸癌
大腸癌の検診としては、便潜血検査が挙げられます。便潜血検査の陽性率は、進行大腸 癌で約70%前後、早期大腸癌で40%前後であるとの報告があります。実際には、便潜血検 査の7%前後が陽性になり、実際に大腸癌が見つかるのはその中の3〜4%と報告されてい ます。つまり、便潜血陽性でも大部分は大腸癌以外の原因であるが、実際に大腸癌があ った場合には、かなり有効な検査と言えます。
そのため便潜血陽性であったならば、大腸内視鏡検査を行う事をおすす めします。一度大腸内視鏡検査を行って、全く異常が無かった場合は3〜 5年間は検査の必要は無いと言われています。(3年がいいか、5年がいい かという結果はまだ出ておりません。)ただその間も便潜血検査は毎年行 い、もし陽性ならば医療機関で相談することが必要です。
大腸内視鏡検査でもしポリープがあった場合には、ポリープの大きさ、 種類などにより、半年後や一年後の大腸内視鏡検査が必要になる事があります。
c.肝臓癌
肝臓癌の多くは肝硬変を基盤として発生し、日本では肝臓癌の85%が肝硬変を伴ってい ます。この肝硬変の多くはB型肝炎やC型肝炎等のウイルス性肝炎が原因であります。健 康診断で肝機能異常を指摘された場合は、医療機関に相談し、B型肝炎ウイルスやC型肝 炎ウイルス等のウイルス検査と腫瘍マーカー(AFP)検査、腹部超音波検査等を行う必要 があると思います。
以上、代表的な消化器癌の検診について自分なりに考えてみましたが、やはり一番大切 なことは、自分の体は自分で守るという自覚ではないかと思います。これからも、是非 そのお手伝いをさせて頂きたいと思っています。
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