ろうさいニュース
重症脳梗塞に対する当院での診断・治療
脳神経外科医師 鬼頭 知宏
脳梗塞とは脳の血管が詰って脳細胞が死んでゆく病気ですが、細い血管が詰るものから太い血管が詰るものまでいろいろあります。当然、細い血管が詰ったときよりも太い血管が詰ったときの方が重症となります。細い血管が詰った脳梗塞の場合は、点滴やリハビリが中心となり、治療薬の進歩もあって治療成績も向上してきています。一方、太い血管が詰った場合は、長島元巨人軍監督や小渕元首相のように重篤な後遺症を残されたり、お亡くなりになられたりすることが依然として多いのが現状です。しかし、重症な脳梗塞を生じた方の中にも、当院で実施している『血栓溶解術』によって社会復帰される方もいらっしゃいます。
1.血栓溶解術
この方法は、マイクロカテーテルという細い管を首の動脈や足の付け根の動脈から脳の詰った血管まで挿入していき、カテーテルの動きや特殊な薬の注入によって詰った血管を再開通させる技術です。この治療を受け再開通に成功した場合、多くの方が社会復帰されています。重症脳梗塞で従来の点滴による治療だけで、社会復帰された方は全くいません。もちろん、全ての重症脳梗塞の患者さんに可能な治療ではありません。治療適応の判断には正確な診断が必要です。
2.血栓溶解術の適応
当院では、脳梗塞の診断には原則としてMRIを用いています。通常の撮影方法のみならず、拡散強調画像(DWI)と灌流画像(PWI)という特殊な撮影方法が欠かせません。DWIでは既に脳が障害されてしまった(治療によっても助けられない)領域を、PWIではこれから脳障害となりうる(治療によって助けられるかもしれない)領域を検出します。さらにMRA(血管を写し出す方法)によって詰った血管を特定し、これらの所見を総合的に判断して血栓溶解術の適応を判断します。治療の適応になるのは、簡単に申し上げますと、DWIで検出される領域が狭くて、PWIで検出される領域が広い場合です。DWIで検出される領域が広いときは、助けられない脳障害が既に進行してしまったことを示していますので、血栓溶解術の適応にはなりません。
3.治療成功へ導く鍵
脳梗塞では、発症した瞬間から脳障害が時々刻々と進行していきます。したがって、@発症してから医療機関へいかに早く運ぶか、A病院に到着してから診断・治療にかかる時間をいかに短縮するか、という2点が治療の鍵を握ります。
脳梗塞の主な症状は、意識障害、半身麻痺、言語障害等です。このような症状が見られた場合は、迷わず救急車を呼び、当院を指定して下さい。当院に搬送されてからは、平均して1時間以内にMRI特殊撮影、適応があれば、その後速やかに血栓溶解術が行われています。MRIが24時間撮影できる施設は増えてきましたが、特殊撮影まで24時間可能で、しかもこの早さは全国的にもトップレベルです。また、特に中大脳動脈という血管の閉塞では、部分開通も含めて再開通率は約75%と全国的にも高いレベルを誇っています。
このような取り組み・治療成績が評価されまして、先日発売された「全国病院ランキング」(宝島社)で、当院は脳卒中の治療施設として新潟県で第1位、中部・東海・北陸ブロックの9県中第2位にランキングされました。
最後に
脳梗塞にならないように日頃の健康管理が最も大事なことですが、もし不幸にも脳梗塞にかかってしまったときには、すぐに当院を思い出して下さい。
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