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肺塞栓症いわゆるエコノミークラス症候群について

リハ科医師  石倉 透

 今回は肺塞栓症いわゆるエコノミークラス症候群について取り上げてみます。
 この疾患は飛行機の中に長時間座っていた旅客が到着してからいざ飛行機を降りようとしたときに突然呼吸困難、心停止を起こすという特徴的な話で知られています。いままで元気でいた人が急に発症することがこの疾患の怖いところです。
 この疾患の原因は血栓にあります。狭い機内に長時間座っていることと下肢の運動低下が引き金となり、ふくらはぎの血の流れがうっ滞します。ここに血のかたまりができ、立ち上がったはずみでこの血栓が動きだし、血管の流れに乗って肺に詰まって呼吸困難を来してしまいます。
 飛行機のエコノミークラスに限らず、ファーストクラスや列車やタクシー、船などの交通機関でも長時間着席していた旅客から発症することが知られています。旅行以外にも、中越地震において避難住民が車中泊後に発症し、3名が亡くなっているのはわれわれ新潟県民には記憶に新しいところです。
 発症した患者の平均発症年齢は60歳前後で、低身長の女性に多く発症するとされています。さらに危険因子として6ヶ月以内に手術の既往(外科、整形外科などすべて)、静脈瘤がある、妊娠中、出産直後、肥満、糖尿病、高脂血症が挙げられます。またいったん発症すると治療をし、血栓が完全に無くなってからも再発する可能性がぐっと高くなります。そのためこの疾患は予防が重要であるといえます。
 そこで予防法ですが、

  1. 着席中でも足の運動を積極的にしましょう。狭い場所でも積極的に足首の運 動やふくらはぎのマッサージをすることが重要です。
  2. 水分を十分に補給しましょう。ただしアルコール類やコーヒーは利尿作用が あるので逆効果です。
  3. 動きやすくゆったりとした服装で、ときどき深呼吸をしましょう。

高リスクの方や以前発症したことのある方はあらかじめ医療用弾性ストッキングを着用することが勧められます。何か心配な点があれば気軽にお問い合わせ下さい。

 

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