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「心 房 細 動」

第2循環器内科部長  保坂幸男

 小渕元総理大臣や長嶋元監督が脳梗塞となり、その原因としても取り上げられたことによって、心房細動という不整脈が、随分と認識されるようになった気がします。心房細動は、もっとも罹患率の高い不整脈であり、遭遇する機会も多く、復習も兼ねて最近の知見を取り上げてみたいと思います。
<心房細動の復習>
@ 頻度:
 弁膜症・心不全などに合併することが多く、加齢とともに増加し、40歳以上で2.3%、65歳以上で5.9%、80歳以上で10%と推定されています。
A 心機能:
 心房の収縮機能(補助ポンプ)の低下により、心拍出量は15〜20%減少します。
B 血栓塞栓症:
 心房での血栓形成が亢進し、脳梗塞などの血栓塞栓症を合併しやすくなり、危険因子(一過性脳虚血発作・脳梗塞、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、うっ血性心不全)・年齢・弁膜症などにより抗血栓療法が推奨されています。
 非弁膜症心房細動の血栓塞栓症の発症率は、対照群の年平均4.5%に対し、ワーファリン療法群では年平均1.4%であり、68%の抑制効果を認めています。
 危険因子・弁膜症がない場合には、60歳未満では抗血栓療法は行わず、75歳以上ではワーファリン療法を、60歳以上75歳未満では抗血小板療法もしくはワーファリン療法を推奨されています(ただし、抗血小板療法に関しては有効性に疑問の声が多い)。
 また、発作性心房細動と持続性・永続性心房細動の血栓塞栓症の発症率は同等と考えられています。
C 除細動:
 発症48時間以内であれば電気的または薬理学的除細動による合併症が少ないものの、48時間以降は注意が必要です。
<最近の知見>
@ 洞調律維持vs心拍数調節:
 高齢者(平均60〜70歳)を対象とした研究で、心拍数調節療法(レートコントロール)は洞調律維持療法(リズムコントロール)に劣らないと報告されています。
A 高周波カテーテルアブレーションによる肺動脈隔離術:
 肺動脈隔離術後の心房細動非再発率(1年間)は70〜90%と非常に高率です。また、肺動脈隔離術は、薬物療法に比べて生命予後も生活の質(QOL)も優れていることが分かってきました。
 心房細動は非致死性不整脈(良性不整脈?)であるものの、QOLを大きく障害し、長期的に見ると生命予後すら悪化させる可能性があります。それぞれの症例(特に初発)に対して、心機能評価(心エコーなど)・合併症の検索を行い、もっとも有益な治療方針を立てることが重要と思われます。
 もし、御不明な点がございましたら、いつでも御連絡頂けると幸いです。

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