がん治療における放射線治療
病院長 酒井 邦夫
がん治療の三本柱は、手術、放射線治療、化学療法とされていますが、わが国では放射線治療がかなり立ち遅れていると言わざるを得ません。米国ではがん患者の3人に2人は放射線治療を受けているのに、わが国では4人に1人しか受けていないのが現状です。最近はわが国でも、放射線治療が有効な前立腺がん、肺がん、乳がん、食道がんなどの患者さんが増えてきていますので、がん治療における放射線治療の重要性が増しております。4月から施行された「がん対策基本法」においても、放射線治療の必要な患者さんが、きちんとした標準的な放射線治療を受けられるように、放射線治療体制を整備する必要性が強調されております。本稿では、わが国の放射線治療の現状と課題をまとめ、あわせて当院の放射線治療への取り組みについて、ご紹介させていただきます。
1.放射線治療の特長
放射線治療の第一の特長は、機能や形態を温存した状態でがんを治すことができることです。例えば喉頭がんでは、喉頭全摘手術を受けると発声機能が失われてしまいますが、放射線治療では発声機能を失わずにがんを治すことができます。乳がんでは、放射線療法との併用で乳房の形態を温存する治療法が普及しつつあります。
第二の特長は、手術や化学療法に比較して、身体の負担が少ないことです。高齢者や合併症のある患者さんでは、手術や化学療法は適用困難ですが、放射線治療は可能です。多くの場合、入院せずに外来で治療を受けられます。最近では治療成績も向上し、がんの種類によっては手術とほぼ同等の効果が得られるようになっています。
第三の特長はコストが比較的低いことです。抗がん剤の年間売り上げに比較すると、放射線療法はその8分の1に過ぎないことから、医療費の軽減にも寄与することになります。
2.放射線治療の最近の進歩
がん病巣に十分な量の放射線をかければ、がん細胞は死滅します。しかしがん病巣の周辺にある正常細胞にもダメージを与えるために、放射線障害を合併しやすいのが、従来の放射線療法の弱点でした。しかし最近、放射線照射技術が著しく進歩し、がん病巣をピンポイントで狙い撃ちにすることが可能になりました。合併症なしに、放射線でがんを治すことが可能になったのです。
ピンポイント照射法として最初に普及したのは、脳の患部にコバルト60のガンマ線を集中させる「ガンマナイフ」です。現在は、リニアックX線による「定位照射」技術が開発されたために、早期の肺がんや肝がんなど、脳以外の体幹部のがんに対しても、同様のピンポイント照射が可能となりました。
また、究極の放射線治療とも言われる「強度変調放射線治療(IMRT)」が、米国において普及しつつあります。しかし精度の高い装置と高度の治療技術が必要なため、わが国ではまだ普及していません。その他に、きわめて高額な設備投資を必要とする陽子線治療や重イオン線治療が、放射線医学総合研究所(千葉市)など国内の数施設で、高度先進医療として行われております。
3.わが国の放射線治療体制
わが国では放射線治療にかかわるスタッフが極端に不足しています。放射線治療専門医は米国の5,000人に対し、日本はわずか500人に過ぎません。医療現場で放射線治療装置の精度管理にあたる物理工学の専門家(医学物理士など)にいたっては、米国の5,000人に対してわが国では実質数十名に過ぎないのが現状です。放射線治療にかかわる人材の育成が喫緊の課題となっています。
4.当院の放射線治療への取り組み
がんによる死亡は、1981年に日本人の死因第1位になって以来も増加を続け、最近は3人に1人はがんで死亡しております。このまま推移すると、近い将来、国民の2人に1人はがんで死亡すると予測されています。とくに新潟県では、がんによる死亡率が全国平均よりも高いことから、強力ながん対策の推進が求められています。
上越医療圏(人口約30万人)では、放射線治療の可能な施設は現在のところ県立中央病院1ヶ所しかなく、人口当たりの放射線治療施設数は全国的にみても極端に少ない状態にあります。隣接する中越医療圏(人口約39万人)に4ヶ所あるのに比較しても、その違いは明らかです。
私自身、放射線腫瘍学を専門としてきたこともあって、5年前に当院に赴任以来、放射線治療装置の導入について検討を重ねてまいりました。この度ようやく、数少ない放射線治療専門医を確保できる見通しが立ったことから、定位照射などの可能な最先端のリニアック装置を導入することになりました。平成20年4月の稼動を目標に、高度な放射線治療技術を安全に実施するためのシステムづくりに鋭意取り組んでおります。上越地域住民の皆様が、安心して標準的な放射線治療を受けられるような体制を整備したいと考えておりますので、ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。
アスベスト検診のご案内
当院のアスベスト疾患センターでは、アスベストに関する検診コースを下記のとおり3コース設定しております。適切なコースをお選びいただき、ご活用いただければ幸いです。なおご不明な点がありましたら、医事課医事係(電話:025-543-3123、内線1233)へお問い合わせください。
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@アスベスト
一般検診コース |
Aアスベスト
CT検診コース |
B肺がん・中皮腫
CT検診コース |
対象 |
職業上アスベスト曝露の可能性が考えられる方 |
職業上アスベスト曝露の可能性が考えられる方 |
職業上アスベスト曝露の可能性は考えられないが、日常生活でのアスベスト曝露等による健康影響を心配している方 |
検診項目 |
問診、
診察、
胸部エックス線検査 |
問診、
診察、
胸部エックス線検査、
胸部CT検査* |
簡易問診票の記入、
胸部CT検査* |
検診窓口 |
内科外来 |
内科外来 |
放射線科 |
検診日時 |
毎週火曜・木曜
午前中 |
毎週火曜・木曜
午前中 |
毎日(月〜金)
13:30〜16:30 |
所要時間 |
約1時間 |
約3時間 |
約30分 |
検診料金 |
6,300円(税込) |
18,900円(税込) |
12,600円(税込) |
申込方法 |
予約制(次のいずれかの方法による)
1)医事課医事係へ 電話
2)医事課0番窓口で 直接予約 |
予約制(次のいずれかの方法による)
1)医事課医事係へ電話
2)医事課0番窓口で直 接予約 |
予約制(次のいずれかの方法による)
1)受診申込書(当院ホ ームページからダウ ンロードできます)を 医事課に郵送/FAX
2)医事課医事係へ電話
3)医事課0番窓口で直 接予約 |
(注1) |
職業上アスベスト曝露の可能性が考えられる方は、@コースまたはAコースのいずれかをお選びください。初回検診はAコースをお勧めします。 |
(注2) |
職業上アスベスト曝露の可能性は考えられないが、日常生活でのアスベスト曝露等による健康影響を心配されている方は、Bコースをお選びください。 |
(注3) |
胸部CT検査*は、高性能の16列マルチスライスCTで行います。 |
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* お申込み・お問い合わせ 空き状況等をご確認の上お申し込みください。 |
項 目 |
申込問い合わせ先 |
ドック・女性専用外来 |
医事課医事係 小松 025-543-3123 内線1233 |
睡眠時無呼吸外来 |
内科外来 025-543-3123 内線3010 |
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* ドック・オプションのご案内 |
胃癌検診 |
胃カメラ |
15,000円(経鼻内視鏡、経口内視鏡の選択が可能) |
胃透視 |
10,000円 |
肺癌検診 |
CT |
9,000円 |
喀痰細胞診 |
3,500円 |
子宮癌検診 |
子宮頚部細胞診・内診 |
3,500円 (第1・3・5の火曜日のみ) |
乳癌検診 |
マンモグラフィ・触診 |
6,000円 |
前立腺癌検診 |
PSA測定 |
1,800円 |
骨粗鬆症検診 |
骨密度測定 |
3,600円 (エックス線検査による) |
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☆ 医師交代のお知らせ ☆
転入 |
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転出 |
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(4/1) |
呼吸器外科 |
近石泰弘医師 |
(3/31) |
呼吸器外科 |
能勢直弘部長 |
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リハ科 |
鈴木和也副部長 |
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リハ科 |
石倉 透医師 |
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リハ科 |
玉川省吾医師 |
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リハ科 |
田真一医師 |
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脳神経外科 |
中村公彦医師 |
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泌尿器科 |
志村尚宣部長 |
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泌尿器科 |
信下智広医師 |
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耳鼻咽喉科 |
岡坂健司部長 |
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歯科口腔外科 |
齋藤正直医師 |
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歯科口腔外科 |
関 雪絵医師 |
プロフィールについては、次号でお知らせします。 |
連携医療機関のご紹介
自院の紹介とほんの少しばかりのお願い
駅南クリニック富樫医院 富樫 満
当院は労災病院から歩いて2分の東雲町2丁目セブンの隣にあります。正式名称は医療法人社団駅南クリニック・富樫医院と申します。医薬分業で労災さんの目の前には所謂“門前薬局さん”が軒を連ねておりますが、私のところも“門前医院”と言うべき立地で、労災病院あっての当院といえましょう。
私は9年ほど貝沼院長先生時代の内科に勤務し平成10年に開業しました。このため、診療内容は当時担当した内科一般、消化器科中心で胃・大腸内視鏡や超音波検査等を行い、また長岡立川病院循環器内科での研修をもとに、専門の循環器医に紹介すべき心血管疾患の早期発見に努めています。その一方、家庭医・かかりつけ医が求められるなか、可能な限り総合診療、在宅往診も手がけています。
ところで、最近は軽い症状ならまずはこちらで診てもらい、病状によって担当科に紹介してもらおうと考えている患者さんが多くなってきたように思われます。
この傾向は、病院の先生方に緊急医療や重症患者さんの守護神として全力で対応してもらうためにも歓迎すべきことで、病院の外来診療が開業医で対応できる疾患に忙殺されることのないよう、私たち開業医は一層努力せねばと気を引き締めております。
しかし、大変お世話になっているのに心苦しいのですが唯ひとつお願いしたいことがあります。
と申しますのは、最近の外来適正化の流れによる開業医への逆紹介の件に関してです。
これ自体は前述のように外来機能の維持のため重要なことであり、またこちらにとっても大変ありがたいことなのですが、例外を作っていただけないものでしょうか。
例えば、開院以来労災に通院し最後まで労災でと思っている方、労災で一命をとりとめ信頼する病院に通院することが生きがいになっている方、足腰が不自由で三科も四科も労災で併診中の方などです。
これらの方は、何人主治医が変わっても労災通いを続けてこられた、いわば長年労災を支えてきたコアの部分の患者さんですので、病状が安定されていてもほんの少しご考慮いただければと思うのですが…。
病院の医療環境が激変している中、奮闘されている病院の先生方のご苦労を差し置いて申し訳ありませんが、この紙面をお借りしてどうかこの点だけ何卒宜しくお願いしたいと存じます。
「みんなのひろば」
うららかな日ざしに、小鳥たちがうれしそうにさえずって・・・ 心はずむ春。気分も若返ってスキップしたくなる! あたたかな太陽から、いっぱい元気をもらいましょう。
散歩道
<秘湯を訪ねて>
南魚沼の山間の秘湯大沢山温泉を訪ねた。先ず門の所で立ち止まってしまう。門の脇に焼き芋が焼いてあり「自由に食べてください」と書いてある。椅子に腰掛けながら分け合ってアツアツの焼いもをたべるとほのかな気分になる。玄関に入ると今度はとれたてのトマト、キュウリ、夏みかんが湧き水の水瓶につけてあり「自由にお食べください」とある。水瓶に赤、緑、黄色が浮かんでいると郷愁を誘う気分である。それを摘んで玄関を上がると今度は囲炉裏を囲んで餅とオニギリがあった。囲炉裏の炭をかきながら餅を焼き、焼きオニギリをほうばった。雪深い魚沼地方の永い冬を想い浮かべて囲炉裏の上に干してある深靴に眼がいってしまう。
遠くに巻機山を望みながら開放感あふれる露天風呂も、熱からずぬるからずほど良いものであった。のびのびとしたひと時を過ごせた。 (S.N)
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