当科では口腔インプラント治療を積極的に進め、開始以来9年6か月を経過しました。同期間に1000本以上を植立し、最近では年間250本程度になっております。今回は無歯顎のインプラント治療についてお話したいと思います。
近代口腔インプラントの成り立ちは無歯顎(歯が全くない)患者様の不便さをいかに解消するかという命題のもと開発されてきた経緯をもちます。しかし、とくに上顎では骨質が疎なため、インプラントを植立してから6か月ほど待ち、インプラントと骨が結合しないとかみ合わせの力にまけて、脱落すると言われてきました。この期間の短縮を図るため、8-14本の埋入を行い、骨質の問題を本数でカバーする方向性が一時とられた時期もありました。
しかし2005年Malo らは上顎無歯顎に4本のみのインプラント植立を行い、さらに術直後から歯の部分を装着(即時荷重)し、その日から食事を可能とする治療を行い、術後1年で97.6%と良好な成功率を報告しました。
当科でも昨年から上顎に4本を植立、2か月待ってから、歯の部分を装着し、良好な結果が得られたため、本年からは手術後1-2日で即時荷重を行っています。
手術は1泊のみ入院していただき、静脈内鎮静法下局所麻酔で行いますが、患者様のほとんどは寝てしまいますので、怖い事はありません。現在のところ上顎の即時荷重は3例のみですが、脱落インプラントはありません。患者さんはいままで術後2-6か月は手術後も義歯を使用するしかなかったため、不自由があり、こちらも義歯の修正を頻繁に行わねばならず、両者とも煩雑でした。しかし即時荷重が可能になり、しっかりしたかみ合わせができるとともに、全く動揺のない歯が得られることで、患者様の喜びと驚きはひとしおであり、装着直後からリンゴの丸かじりが可能です。もちろん骨質の良好な下顎では以前より即時荷重を行っております。今お使いの義歯に御不満のある患者様は歯科口腔外科で御相談下さい。なお、本治療は全額自費治療であり、著しく骨が柔らかい場合には即時荷重は出来ないことを御了解いただきたいと存じます。
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