新潟労災病院内視鏡診療センターでは昨年10月より経鼻内視鏡を導入しました。現在ルーチン検査は、特に希望がなければ経鼻内視鏡で行っております。本年4月に当院で行ったアンケート調査では、経口と経鼻を両方経験した患者さんの約90%が“次回は経鼻内視鏡がよい”としており、患者さんにも概ね好評なようです。
その一方で、画質が劣る、画面が暗い、操作性が悪く狙撃生検能に劣る等の問題点も指摘されています。しかし当センターで検討した限り診断能の低下につながる程の欠点ではないようです。現在の経鼻内視鏡は経口内視鏡に取って代わるものではありませんが、スクリーニング検査としては上部消化管造影検査と同様、有用な検査法と思われます。もちろん今後の症例の蓄積を待ち長期的な評価を行う必要はありますが、経口内視鏡と同じ能力がないことは経鼻内視鏡を否定する理由にはならないのではないでしょうか?
実は私自身、内視鏡医にもかかわらず内視鏡検査が非常に苦手でした。内視鏡を握る以上一度は体験しよう!と決心したのですが、実際には内視鏡が口内に入った時点で嘔吐反射が出現してしまい、咽頭にも至りませんでした・・・。施行医は当時の指導医であり技量の問題でないことは明白です。苦手な人にしか理解してもらえないかもしれませんが、我慢してくださいと言われても無理なものは無理なのです。
そんなわけですっかり内視鏡検査を経験することなく過ごしてきましたが、今回経鼻内視鏡の導入に乗じて再挑戦してみました。結果は無事成功でした。違和感があるのは確かですが、嘔吐反射がほとんどないため落ち着いて検査を受けることが可能です。強いて難を言えば麻酔時と内視鏡の通過時に鼻腔の痛みがありましたが、これらは前処置法の工夫でかなり軽減できると思います。
いまだに“以前胃カメラで死ぬ思いをしたからもうやりたくない!”という患者さんを時々みかけます。まして何の症状もない検診異常では精密検査をうけないで放置している方もおられるかもしれません。そういう方にこそ経鼻内視鏡を経験していただきたい。そして“胃カメラ”が死ぬ思いをさせる検査ではないと感じてもらえれば幸いです。
抗凝固薬・抗血小板薬について
心筋梗塞や脳梗塞の既往がある患者さん、弁膜症の患者さんなど、抗凝固薬・抗血小板薬を内服している場合、休薬のリスクについて議論があります。
当科におきましては基本的には全例休薬せずに上部消化管内視鏡検査を行っております。その上で生検を行う必要が認められた患者さんに限り、リスク説明の上で休薬(必要に応じてへパリン置換も追加)して改めて再検査しています。
やや煩雑ではありますが、全例が生検を必要とする訳ではなく、休薬による事故の可能性がゼロでない以上、生検を行うことに利益を有する患者さんにお願いする方が合理的と考えています。
もちろん主治医の先生が休薬のメリットが上回ると判断された場合、従来通り休薬して受診していただいて結構です。その場合は通常通り内視鏡検査を行い、必要なら同時に生検も可能ですので、内視鏡検査の回数を1回減らせるメリットはあります。
ご検討いただきますようお願いいたします。
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