「A man is as old as his arteries.」 (Osler)
これはアメリカの医学者、オスラー先生(William Osler 1849-1919)のことばです。これを受けて三井記念病院の山門先生が、「人は血管とともに老いる。ならば、血管が若々しくあれば人は若々しく老後をすごせるだろう。」と説明をしておられます。生活習慣病とは基本的に動脈硬化症であるということなのです。生活習慣病という名称は、平成8年12月に厚労省の公衆衛生審議会で初めて成人病に変えて使われました。以後社会的に認知され、現在に至っています。
生活習慣病は狭い意味では脳、心血管疾患を指します。もっと広くとればその前段階である高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満等生活習慣と関係が深い疾患を指します。昨年の日本動脈硬化学会で「脂質異常」ということばが使われていますので、「高コレステロール血症」ではなく「脂質異常症」に変わっています。
生活習慣病は基本的には遺伝と環境(生活習慣)によって発症します。がんも遺伝の要素がきわめて強いですが、たばこをはじめとする生活要因も深く関与しています。すなわち生活習慣病はこれらが複雑に関連して発症します。
遺伝と生活習慣からあるブラックボックスを介して高血圧、糖尿病、脂質異常、高尿酸血症が起こります。高尿酸血症も動脈硬化の大きな原因であることがわかっています。これらによって動脈硬化が起こり、その結果脳梗塞、心筋梗塞が起こる。それを防ぐには動脈硬化をしっかり抑える必要があります。動脈硬化を抑えられないと脳梗塞、心筋梗塞は予防できない。これが「生活習慣病とは動脈硬化症である」と考えられるゆえんです。
さらに肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症は今までそれぞれが独立したものとして取り上げられてきましたが、これらの病気の前段階に内臓脂肪の過剰蓄積がありこれが身体にさまざまな異常をもたらすこと、たとえ少しずつの異常でもそれらが積み重なることで病気の発症が著しく増大することが判明しました。このリスクの集積した状態が生活習慣病、メタボリック症候群です。 |