整形外科では様々な骨折の治療を行っていますが、いわゆる高齢化に伴って増えているのが骨粗鬆症が元になった骨折です。骨粗鬆症で特に弱くなるのは背骨と関節近くの骨で、比較的小さな外傷でも骨折が起こります。有名なのは背骨が潰れる「脊椎圧迫骨折」と脚の付け根が折れる「大腿骨頚部骨折」ですが、今回は腕に起こる骨折について書きます。
上に書いた2つと並んで多いのが手首に起こる「橈骨(とうこつ)遠位端骨折」で、転んで手をついて起きることがほとんどです。手首が腫れ、指も動かせないくらい痛くなり、「ズレ」がひどいと変形も見られます。骨のつきの良いところですので簡単に固定しておくだけで癒合しますが、関節のすぐそばですので変形したまま癒合すると痛みや動きの悪さが残ったり、ひどい場合は腕を動かしたとき近くの関節が脱臼することもあります。治療は整形外科で(接骨院ではありません)、きちんとレントゲンを撮ってから行うことが重要です。以前はできるだけ戻してギプスを長期間巻くという治療しか事実上なかったのですが、最近はもろい骨でもしっかりと固定できる専用の金属製プレートが開発され、使われています。プレートで固定すると言うことは手術をすると言うことですので、入院・麻酔・皮膚切開などが必要になりますが、多くの場合かなり正常に近い状態に骨の形を戻すことができ、ギプス固定の期間も大幅に短くすることができます。怪我をしてから比較的早い時期から手を使うことができ、治った後の後遺症が出る可能性も下げることができます。
同じように転んで肘の近くの骨が折れることがあります。骨粗鬆症で多くなるのは肘の後ろの一番出っ張ったところが折れる「肘頭(ちゅうとう)骨折」と肘の関節よりすぐ上(肩に近い方)が折れる「上腕骨遠位端骨折」です。手術ではやはり金属製の材料を使って固定しますが、特に上腕骨遠位端骨折では上に書いた橈骨遠位端骨折と同様に専用の固定性の強い金属プレートが出てきており、よほどバラバラに折れていない限りはこちらも手術後短い期間の安静だけでリハビリテーションが始められるため、以前に比べて最終的な肘の動きの制限や痛みなどの後遺症が少なくなっています。
もちろんいずれの骨折も、ズレが少なく安定している場合は手術の必要なしに良く治りますのでギプス固定のみで経過を見ることとなります。ただし手術が必要な場合はなるべく早くやることが後の治りを良くすることにつながります。大きな怪我と思ったらすぐに整形外科を受診してください。
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