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尿が汚れていると言われたら

泌尿器科医師  田 所  央

 尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱に貯められ、尿道を通って排泄されます。通常、尿は無菌状態ですが、この尿の通り道のどこかに細菌が感染すると、尿路感染症といわれる状態となり尿が混濁して汚れてきます。細菌が感染する部位によって症状は異なりますが、膀胱や尿道に感染すると排尿時の痛みや頻尿などの症状が見られ、腎臓まで感染が及ぶと発熱・寒気・震え・脇腹や背中の痛みなどの症状が見られます。尿路感染症の多くは細菌が尿の通る方向とは反対に、尿の出てくる外尿道口から入って、上へ上へと膀胱から尿管さらに腎臓に上がってくることによって生じます。腎臓にまで感染が及んだ場合には腎盂腎炎といい重症となることがありますが、普通の膀胱炎・尿道炎は抗生物質の点滴や内服で3日から5日の間に症状が良くなることがほとんどです。しかし、中には治りにくい場合や繰り返す場合もあり、尿の通り道の先天的な異常や排尿機能の障害や尿の通り道に癌が見つかることもあり、場合によっては専門的な検査が必要となります。

 では、尿に細菌が見つかった場合には必ず尿路感染症という病気なのかというと、決してそうではありません。尿道の出口の付近には、全く症状のない正常な人でも常在する細菌がいますし、この細菌が尿の検査のときに混じってしまうこともあり、尿の検査で見つかった菌が必ずしも尿路感染症の原因菌であるとは言えません。また、尿の通り道にカテーテルと呼ばれる管が留置されている場合には、1日に3〜10%ずつ尿の中の細菌が増えるとも言われており、30日以上に渡ってカテーテルが留置されている場合には、ほぼ全例で尿の中に細菌が認められます。尿中に細菌が増殖した状態でも尿路感染症の症状がない場合もあり、これを無症候性細菌尿と言いますが、治療を要するものではありません。無症候性細菌尿は、管を留置していない場合にも見られます。特に高齢の女性に多く、25〜50%で見られ、高齢の男性では15〜45%で見られると言われています。そのため、発熱があり細菌に感染し尿が混濁し汚れていても、その発熱の原因が尿路感染症とは限らないため、他に発熱を来たす病気がないかを注意深く調べる必要があります。尿路感染症の症状が見られる場合には、尿の通り道に重大な病気が他に隠れていることもあり、泌尿器科を受診することをお勧めします。

 

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