医療の進歩は日進月歩でありまして、肺癌治療におきましての最近の進歩を紹介させていただきます。
先ず、手術療法におきましては2cm以下の小型肺癌では区域切除等の縮小手術でも根治の得られるケースがあることがわかってきました。特に画像上、スリガラス陰影で発見される腺癌の亜型の肺胞上皮癌では、縮小手術を選択する機会が増えてきました。
次に、化学療法ですが、血管新生阻害剤のベバシズマブやヨウ酸代謝拮抗剤のペメトレキセドといった全く新しい作用機序の抗癌剤が登場し、高い奏功率が期待できるようになってきました。これらは扁平上皮癌以外によく効くことがわかっており、扁平上皮癌かそれ以外 (主に腺癌) かで使用する薬剤が大きく異なってくる時代となり、気管支鏡検査や手術により肺癌の組織型を確定させることがより重要と考えられるようになりました。また、ゲフィチニブやエルロチニブといった分子標的薬はEGFR遺伝子変異を伴った症例には著効することが知られていますが、これまでは他の化学療法が効かなくなったときに使われるケースが殆どでした。しかし、最近の研究結果でゲフィチニブを初回治療に用いた方がいいのではないかという流れに変わってきています。
抗癌剤の代表的な副作用に、嘔吐、吐き気、があげられますが、アプレピタントやパロノセトロンといった強力な制吐薬が登場し、抗癌剤治療をより苦痛なく施行できるようになってきました。前述したペメトレキセドは副作用も比較的軽く、支持療法の進歩とあいまって、日常の生活を大切にしながらの外来化学療法の施行にも大きな助けになっています。
放射線治療に関しましては定位照射を施行するケースが増えてきました。この照射方法は4日で治療が終了できます。腫瘍の大きさや場所によっては施行できませんが、効果的には従来の照射方法より優れ、合併症のリスクは低くなります。
最後に疼痛コントロールに関しては、フェンタニルテープが、従来の3日に1回の製品から、1日1回貼り替えの新製品で安定した血中濃度がえられるように製剤技術が進歩しています。これによって、よりきめ細かな疼痛コントロールが可能となってきました。
以上のような進歩に我々もきちんと対応し、治療を受けられる地域の方と御家族、お一人お一人の病状と気持ちを大切にし、最善の治療を行えますように我々の病院、呼吸器チームともにベストを尽くして参ります。今後ともみなさまの御理解と御協力を宜しくお願い致します。 |