近年、肺癌治療で大きく変わった点は外科治療においては胸腔鏡の導入。内科治療においては抗がん剤における個別化治療の導入があげられます。
外科治療における胸腔鏡の利点は小さな創で手術が出来ることがあげられます。美容面の向上、痛みが少ないため、術後早期の回復などがあります。小さな創では十分な操作性が得られず、リンパ節郭清などは不十分になるのではという疑問がありましたが、近年では以前の開胸手術と比べて遜色のない郭清が行われるようになってきました。当院でも数年前より、胸腔鏡を導入しております。技術導入のため、大学病院と協力体制の元、手術を行い、初めは症例を選択しながら行ってきましたが、最近では全例胸腔鏡下での手術を行っています。術後の回復も早く、入院日数の短縮もはかれております。
内科治療において分子標的治療薬の開発により個別化治療が行われるようなっています。特に腺癌ではEGFR遺伝子変異陽性であれば、EGFR-TKIによる高い治療効果を得ることが出来ること、内服治療であり、治療中のQOLも向上し、予後の改善も見られています。また、抗がん剤の進歩・改良に伴い、癌の組織型に応じて抗がん剤の使い分けも始まっています。なかなか効果的な治療方法がなかった扁平上皮癌でも分子標的治療薬の開発が行われております。
肺癌は全癌死の中で最も多い癌です。肺癌診療を行う上で、全肺癌症例の5年生存率は25%と報告されているくらい、依然として生存率が低いことが問題です。早期に発見され、手術治療が行われたstage IAの5年生存率は80%を超えます。それでは上越市全体で肺癌の人は何人いるのでしょうか?単年の10万人あたりの罹患率は男性56.5人、女性18.6人と言われています(2001年データ)。現在では罹患率が上昇していることが予想されますが、その当時で考えると現在、約20万人の上越市の中に150人の肺癌患者がいることが予想されます。肺癌は1/3が手術治療の適応であり、1/3が内科的治療を施され、1/3の患者には積極的な治療ができないというのが現状です。肺癌治療の向上には検診の充実、地域の病院との連携が必要不可欠です。当院でも、CTによる肺癌検診の導入を行い、また、呼吸器内科・外科、放射線診断医・治療医、病理医による呼吸器カンファレンスを行い、症例を共有することでよりよい治療を心がけております。
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