昨年11月、新聞に上記の見出しがあり目を引かれました。腎臓病の医療に携わる者として、ぜひ多くの方に読んでいただきたい内容でしたので紹介します。記事には『慢性腎臓病(CKD)という病気を知っているだろうか。腎臓の異常を早期発見するために提案された新しい病気の考え方だ。患者は国内に約1300万人と推定され、「新たな国民病」とも呼ばれる。日本腎臓学会は重症の慢性腎不全まで進まないよう、糖尿病が持病の人らに早めの受診を呼びかけている。』(平成24年11月20日朝日新聞より)と書かれていました。
腎臓の病気はかなり重くなるまで自覚症状がほとんどありません。徐々に病気が進行し、ある日突然、末期の腎不全で透析が必要というようなことを防ぐため、2002年に米国で提唱され日本にも広がってきた考え方が「慢性腎臓病」です。
では、なぜ糖尿病が持病の人に早めの受診を呼びかけるのでしょうか。糖尿病には「糖尿病性腎症」という合併症があります。高血糖の血液が血管内を流れ続けることで、糖尿病の方は全身の動脈硬化が進みます。腎臓は細かい血管がたくさんあるため痛みやすく、長期間ダメージを受け続けることで腎症を合併します。近年は糖尿病患者の増加に伴い、腎症や透析導入の患者も増加を続けています。実際、当院の透析室では10年前57名であった血液透析患者数が20名近く増えています。血液透析は1回の治療に3〜5時間を要し、週3回行います。透析機が23台あり日曜日を除き毎日透析を行っていますが、施設の許容をオーバーしている状況です。これは当院に限らず、新潟県内ではどの施設も同じような状況にあります。
そこで、厚生労働省は糖尿病患者の透析導入を少しでも遅らせることを目的に、平成24年度の診療報酬改定で「糖尿病透析予防指導管理料」を新設しました。また当院では平成23年度に、腎臓病教室を開催し、今年度は教室参加者の個人指導を行ってきました。指導を行ってみて、現在治療中の方や教室に参加された方はすでに受診行動を取っている、または関心を持っておられるため、このまま通院を継続し、医師や栄養士、看護師から指導を受けることで、正しい情報や知識を持つことができると思われました。しかし、問題は予備軍と言われる方々が、如何に正しい情報や知識を持ち行動していくかということではないかと感じました。皆さん、まずはご自分の健康診断の結果を見てください。検尿で蛋白や血液、糖が(+)になっていませんか?またはそれを放置していませんか?また、糸球体濾過量(GFR)やクレアチニンという腎臓の働きを表す数値は正常でしょうか?これらの検査からは、我慢強い腎臓が静かに悲鳴をあげているというサインを知ることができます。この機会に、検査の数値に関心を持って頂けたら幸いに思います。
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