顎関節脱臼とは、口を大きく開けた後、特にあくびが多いと思いますが、口が閉じなくなることです。これは、顎の関節が、一定以上の運動をして、関節がもとにもどらなくなり、同時に関節内や周囲の軟組織を傷めてしまう疾患で、自力で回復することは困難ですから医療機関を受診する必要があります。患者自身はしゃべりにくくなり、第三者からみると、面長にみえたり、嚥下できないため口から唾液がこぼれてきたり、耳の前が陥没しているのが症状として起こります。通常は、脱臼した顎を整復し、開口制限することで、一定期間再発しなければ、自然と回復し脱臼しなくなるのですが、そうではなく頻回に外れる患者さんもいます。これを習慣性顎関節脱臼と言います。
習慣性になると、いくら開口制限をしていても脱臼したり、逆に開口制限をしすぎるとその機器の刺激によって顎の下に褥瘡を形成して開口制限ができなくなります。習慣性になる方は、ご高齢の方が多いのですが、その中でも多数の歯が欠損していて、義歯を入れていない方、脳血管疾患がある方、パーキンソン病などの神経疾患がある方が多くなっています。特に義歯をお持ちでない方は、顎(下顎)の位置が安定しないために非常に起こりやすくなります。
治療法としては、先ほど述べたように、まずは整復して、開口制限を一定期間行います。整復は通常、無麻酔でできますが、痛み等で困難な場合は、笑気を使用したり、麻酔で眠らせてから行います。それでも脱臼してしまう場合は、他の手立てを考えなければいけません。そこで、当科では、「自己血注入療法」を行っています。これは、患者さん自身の血液を顎の関節に注入し、関節内を硬くすることで、関節の可動域を制限する治療法です。外来通院でも可能な治療法で、自分の血液ですので感染する可能性は非常に低く、関節に局所麻酔してから行いますので、患者さん自身には苦痛はありませんし、合併症の少ない治療法です。
よく顎が外れる方がご家族にいらっしゃいましたらご相談ください。
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